朝ドラ『ブギウギ』趣里演じるスズ子の笑顔に滲む“不安” 劇団にも変化が問われる時代に
「お客さんにも、ぎょうさん福を届けたり!」と母・ツヤ(水川あさみ)が付けた“福来スズ子”の芸名で、梅丸少女歌劇団(USK)のレビューガールデビューを果たした鈴子(澤井梨丘)。あれから6年、18歳になったスズ子(趣里)は脇役として劇団を支えていた。
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』第3週が幕を開け、主演の趣里がついに本格登場。景気の悪さを吹き飛ばすような爛漫の笑顔を届けるとともに、スズ子が抱える将来への不安をそこに忍ばせる。
昭和8年(1933年)。関西では押しも押されもせぬ人気劇団となったUSKのレビューショーは今や全て単独公演で、劇団員は稽古と本番で大忙しの日々を送っていた。一方で、4年前の二ューヨーク株式市場の大暴落を契機に世界恐慌が勃発。日本経済も打撃を受け、この頃は解雇や減給などの被害を被った労働者による待遇改善運動が各地で起こっていた時期だ。USKを運営する梅丸株式会社も例外ではなく、スズ子たちにも思わぬ形で不景気のしわ寄せが及ぶ。
観客に飽きられないようにという上の方針で、次回公演「四季の宴」を演出することになったのは変わらずトップ娘役の大和(蒼井優)。自分のいる場所=劇団を存続させるために次の一手を模索する彼女は先輩も後輩も分け隔てなく起用することを団員たちの前で宣言し、士気を高める。苦しい時こそ、劇団の真価が問われるもの。トップ男役の橘(翼和希)から教育係を引き継いだスズ子も、「一人のミスは全員のミスや。舞台は一人で作るもんちゃうで!」と一丁前に団結の大切さを説いてみせる。
そんな中、輪を乱しかねない言動を取るのが後輩の秋山(伊原六花)だ。彼女はスズ子がかつて試験で不合格となった花咲少女歌劇団から移籍してきた期待の若手で、先輩を押しのけ男役として人気を博していた。だから図に乗っているというよりも、人一倍理想が高いのだろう。誰に対しても物怖じせず意見するため、他の団員たちとの軋轢を生んでいた。
特に、彼女に対してあまり良い感情を抱いていないのが桜庭(片山友希)。秋山とは男役同士なのもあり、嫉妬や焦りが入り混じった複雑な感情を随所に見せる。しかし、後輩に抜かされて焦りを感じているのは桜庭だけじゃない。男性を虜にする魅力を持った“リリー”こと、白川(清水くるみ)は衣装を見る限りその他大勢ではない役をすでに与えられており、同期の中でも抜きん出ている様子である。一方、同じ娘役でもまだまだ脇役であるスズ子はこれからどうやって自分を売り込んでいいのか悩んでいた。