朝ドラ『ブギウギ』趣里演じるスズ子の笑顔に滲む“不安”　劇団にも変化が問われる時代に

　そんなスズ子に「自分の個性みたいなものは、いつか必ず見つかるから焦ってはダメ」とアドバイスを送る大和。芸能の世界には終わりがない。デビューできるのも一握りだが、デビューしてからも生き残るために絶え間ない努力が必要となる。「続けていれば。でも、続けることが一番大変なんだけどね」という大和の言葉は、スズ子に希望を与えると同時に、この世界で生きていくことの厳しさを教えてくれた。その大和も、今は演出を任されたプレッシャーでいっぱいいっぱいなのだろう。良い舞台を作るために団員の指導にも精を出し、秋山の意見も後輩だからといって突っぱねることなく取り入れる。かたや少し後ろから全体を見回す橘はこれまでの常識を覆すそのやり方に苦言を呈すが、大和も「私は劇団を一段上に上げたい」と一歩も引かない姿勢だ。時代の移り変わりとともに、それぞれ変化が問われている。

　対照的に、スズ子の実家である銭湯「はな湯」は何から何までほとんど変わりがない。常連客の顔ぶれも6年前と全く同じで、梅吉（柳葉敏郎）もツヤも研究生時代から変わらぬテンションでスズ子を応援し続けている。スズ子が大きい役を未だもらえていないことも、六郎（黒崎煌代）が学校に行っていないことも両親には取るに足らぬことなのだ。不景気なんて何のそのと言わんばかりに笑い声が絶え間なく響くはな湯は、スズ子にとってはある種の聖域。そこにいる人たちの「おかえり」は、大和の言う継続の難しさを少し和らげてくれる。時代の変化に負けず頑張れ、スズ子！

■放送情報
NHK連続テレビ小説『ブギウギ』
総合：午前8:00〜8:15、（再放送）12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K：7:30〜7:45、（再放送）11:00 〜11:15
出演：趣里、水上恒司、草彅剛、蒼井優、菊地凛子、水川あさみ、柳葉敏郎ほか
脚本：足立紳、櫻井剛
制作統括：福岡利武、櫻井壮一
プロデューサー：橋爪國臣
演出：福井充広、鈴木航、二見大輔、泉並敬眞、盆子原誠ほか
写真提供＝NHK