『ブギウギ』は“朝ドラええとこどり”に“アップデート”を加えたハイブリッドな一作

『ブギウギ』はハイブリッドな朝ドラに

 「ほな、お母ちゃんもお客さんとズキズキワクワクしてくるわ!」とスタートしたNHK連続テレビ小説『ブギウギ』。昭和の時代にブギの女王と呼ばれ、戦争で疲弊した日本を歌とダンスでハッピーにした笠置シヅ子がモデルの朝ドラだ。

 第1週「ワテ、歌うで!」と第2週「笑う門には福来る」までの10話を観てもっとも印象深かったのは“朝ドラええとこどり”な登場人物たち。まず、ヒロイン・鈴子(澤井梨丘)がとにかく元気。誰にでも臆せず話しかけ曲がったことが大嫌い。幼なじみ・タイ子(清水胡桃)に想い人がいると知ればその告白に一役買い、入所した梅丸少女歌劇団の同期・辰美(木村湖音)が昼食に干しいもを食べている姿を見れば弁当を差し入れる。

 と書くと、なにやら相手の状況や気持ちを考えず独りよがりの正義感で突っ走るヒロインかと思われそうだが(確かに過去にはそういうタイプのヒロインも存在した)、視聴者にそう感じさせない足立紳の脚本が上手い。タイ子も辰美も鈴子のおせっかいを唯々諾々とは受け入れず自分の気持ちをしっかり伝え、鈴子もそこで相手の心の内を想像し行動することを学んでいく。

 鈴子が育った環境も“朝ドラええとこどり”だ。自分が書いた脚本が映画になることを夢見るお父ちゃん・梅吉(柳葉敏郎)と、経営する銭湯の仕事をパワフルにこなすお母ちゃん・ツヤ(水川あさみ)に加え、いつもお金を払わず風呂に入るアホのおっちゃん(岡部たかし)や記憶を失い「はなの湯」で住み込みとして働くゴンベエ(宇野祥平)、さらに少々ゆっくりだが笑顔が可愛い弟の六郎(又野暁仁)など、どこか既視感がある登場人物がにぎやかに揃う。

 既視感はあるが彼らの描かれ方にはそれぞれに新たな視点が加えられている。たとえば梅吉とツヤは鈴子のやりたいことを一切否定せず、どんな状況でも100パーセント娘を応援。いろいろ事情もありそうだが、朝ドラにおいてここまで子どもの自発性を尊重し、ストレートに愛情を表現する両親は珍しい。アホのおっちゃんもただの変人ではなく、どこか哲学的な雰囲気を漂わせているし、ゴンベエの過去と彼の記憶は今後の展開においてひとつのポイントになると予想。

 では、鈴子が研究生として入所した梅丸少女歌劇団、通称USKの面々はどうか。

 やはりここにも“朝ドラええとこどり”なキャラクターが多く登場する。受験日翌日に事務所まで押しかけてきた鈴子の歌を聞き「まあ、ええがな」と入所を認めるUSKの音楽部長・林(橋本じゅん)や梅丸の社長・大熊(升毅)に加え、USKの男役トップスターでありながら、新人教育も担う橘アオイ(翼和希)と特待生として東京からやってきた娘役トップの大和礼子(蒼井優)。鈴子と同期のふたり、幸子(小南希良梨)は家の商売を継ぐことを拒否して梅丸に来た勝気なお嬢さんで、辰美は将来家計を支えるために芸能の道を選んだ苦労人。

 ヒロインを少し離れた場所から温かく見守る指導者、関西モード漂う社長、恵まれた実家で育った少女と生活のために仕事を得ようとする少女という対称的なキャラクターにもやはり既視感があるが、たとえば同期の3人が次第に結束していく様子などが鈴子の風邪を媒介に丁寧かつ速いテンポで描かれているため、飽きることがない。

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