宮野真守、奥田瑛二、中田青渚、伊礼彼方 『らんまん』を盛り上げた“裏MVP”は?

『らんまん』を盛り上げた“裏MVP”は?

 連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)がついに最終週を迎えた。主人公・万太郎(神木隆之介)の「この世に雑草という草はない。どの草花にも必ずそこで生きる理由がある」という台詞があるように、誰一人として必要のない登場人物がいなかった本作。今回はメインの役柄ではなかったが、それぞれ素晴らしい“咲き様”を見せてくれた“裏MVP的”な5人の俳優を紹介したい。

ディーン・フジオカ(坂本龍馬/天狗役)

 この人がいなければ、万太郎の冒険物語は始まらなかったであろう。ディーン・フジオカ演じる“天狗”こと、坂本龍馬だ。生まれつき身体が弱いことで神様に文句を言おうと、裏山の神社にやってきた5歳の万太郎(森優理斗)が偶然出会った天狗。2人が語らうシーンは、そこが神聖な場所であるのも相まって、まるで幻想を見ているような気分にさせられた。のちに天狗を迎えにきた者の台詞でその正体が坂本龍馬であることが判明したが、史実ではこの時期に龍馬は高知にいないはずである。

 そんな虚実入り混じる存在を成立させたディーン。彼自身、観る者のロマンを掻き立てる存在で、現実離れした設定も行動もモノにできてしまう役者である。身分で人生が決まる時代が終わり、自分が望む者になれる新時代の体現者としてこれ以上ない説得力があった。幼くして「生まれてこない方がよかった」と思わされてしまった万太郎に息吹を与えた龍馬は、史実に添えばもうこの世にはいない。だが、同時にどこかでフラッと万太郎のもとに現れてくれるような気もする。

宮野真守(早川逸馬役)

 酒蔵「峰屋」当主の座を捨て、植物学者になるために上京を決意した万太郎。そこには多くの人の後押しがあったわけだが、その一人が宮野真守演じる政治結社「声明社」のリーダー・逸馬である。自由民権運動を多くの人々に広め、万太郎も思わず立ち止まってしまうような力強い演説。そこに、声優である宮野が持つ声のパワーとそこにいるだけで目を引きつけるカリスマ性は必要不可欠だった。それでいて、万太郎と一夜にして“友”になれる親しみも持ち合わせている。思わず拍手を送りたくなるようなキャスティングだ。

 物語の後半で再登場した際の成熟した、それでいて少年のような心は変わっていないことが伝わってくる演技も圧巻だった。万太郎が進むべき道を見失った時に必ず現れ、その太陽のような明るさで先を照らしてくれた逸馬。間違いなく、彼も演じる宮野も本作を支えた裏MVPの一人だ。

伊礼彼方(高藤雅修役)

『らんまん』伊礼彼方

 万太郎の恋のライバルとして物語の中盤で活躍したのが、伊礼彼方演じる元薩摩藩の実業家・高藤だ。当時は珍しくなかったのかもしれないが、妻がいる身でありながら寿恵子(浜辺美波)をお妾さんとして横浜の別宅に迎えようとし、女性視聴者を敵に回したこの男。“ヤバ藤”という愛称(?)までつけられることとなったが、悪役かと言われればそうではない。気品があり、基本的にジェントルマンで物腰が柔らかいので思わず心をほだされそうになってしまう。そんな微妙な役回りを伊礼は見事にやってのけた。

 妻のことを「あれは女ではなか」と言ったり、体裁を整えるために寿恵子を元老院議官・白川(三上市朗)の養女にしようとしたり、女性を見下している言動が見られた高藤。だが当の本人はそのことに無自覚で、ある意味純粋な恋する男であったことが、寿恵子に拒絶されたときに見せる困惑した表情で裏付けされる。強烈なインパクトがあり、今でもふとした瞬間に思い出してしまう人が多いのではないだろうか。ただ一つ言えるのは、高藤は本当に見る目があったということ……。

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