要潤、田中哲司、今野浩喜、亀田佳明 『らんまん』を支えた植物学教室の俳優たち
いよいよ最終週となる連続テレビ小説『らんまん』(NHK総合)。主人公・万太郎(神木隆之介)が長い時間を過ごした東京大学(帝国大学)植物学教室の人々は、万太郎と出会ったことで、登場した頃とは大きく変化した。植物学教室のメンバーから、田邊(要潤)、徳永(田中哲司)、大窪(今野浩喜)、野宮(亀田佳明)のこれまでを振り返ってみたい。
植物学を学びたいと、土佐から東京へとやって来た万太郎。少年時代に感銘を受け、模写をした「植物図」の作者である憧れの植物学者・里中(いとうせいこう)と野田(田辺誠一)のいる博物館を訪ねた万太郎は、東京大学植物学教室への紹介状を書いてもらう。
紹介状を持っていても、小学校中退の万太郎は、東京大学のエリートたちから快く受け入れられるはずはなく、最初はみんな胡散臭そうな表情で万太郎を見ていた。そんな中、アメリカのコーネル大学へ留学し、東京大学植物学教室の初代教授となった田邊は、英語を流暢に話す万太郎を気に入り、植物学教室への出入りを許可する。
だが、万太郎を自分専属のプラントハンターにしたいと考えた田邊は、万太郎に「わたしのものになりなさい」と言い放つ。それを万太郎が断ると、彼との間に大きな溝ができてしまった。その後も尊大な態度を続ける田邊は、新種の名付け親になかなかなれない状況にいら立つ日々を送っていたが、ムジナモを日本で初めて発見した万太郎に論文を発表する許可を与える。
少し溝が埋まったかと思ったのも束の間、田邊の厚意で論文を発表できたのに、万太郎が田邊の名前を記さなかったために、激怒した田邊は万太郎に植物学教室への出入り禁止を命じる。その後も、妻の聡子(中田青渚)が万太郎の妻・寿恵子(浜辺美波)と親しくすることに目くじらを立てるが、寿恵子から万太郎に執心していると指摘される田邊。
キレンゲショウマを新属新種と認定し、ついに名付け親になれるも、大学を非職になってしまった田邊は、静養先の鎌倉の海岸で溺死。万太郎と寿恵子を訪ねてきた聡子は、田邊の蔵書は全て万太郎に譲ることと、彼の心に最も残っているのは万太郎だったと、田邊の遺言を伝える。どれだけ田邊のプライドが高くても、確執が消えなくても、万太郎は田邊の心を大きく揺さぶる存在となったのだ。
一方、万太郎が植物学教室への出入りを許されたとき、助教授の徳永は、最高学府である東大の権威が軽んじられると、小学校中退の万太郎の存在に最も否定的だったが、国文学の高い素養があり、源氏物語の夕顔が好きな徳永は、国文学に精通している万太郎と打ち解けるようになる。
植物学における万太郎の功績も認めて高く評価した徳永は、ドイツへ留学後、失脚した田邊の後任として教授に就任すると、万太郎を正式な助手として雇い、植物学教室に復帰させる。以後、大学で植物分類学を担当する万太郎を支え続けてきた徳永だったが、国の神社合祀政策によって森が失われることに反発する万太郎を庇い切れなくなり、辞職する彼に万葉集の歌を贈って別れを告げることに。上の句を読む徳永に対して、下の句を読む万太郎。文学がつないだ2人の関係を表す描写が感動的だった。