宮野真守、奥田瑛二、中田青渚、伊礼彼方 『らんまん』を盛り上げた“裏MVP”は?
奥田瑛二(大畑義平役)
関東大震災のときに、久しぶりの登場となった奥田瑛二演じる大畑印刷所の義平。元火消しの血が騒いだのか、「町の人を助けろー! 守れ!」と叫ぶその姿にSNSでは驚きの声があがった。おそらく年齢は80歳をとうに超えているはずである。それでもなお、衰えぬ熱き魂。普段は大らかだが、頭に血がのぼると突然それが垣間見える義平の“静”と“動”を奥田は使い分けた。
その両方が混在する圧巻の芝居を見せたのが、万太郎の釣書を寿恵子の実家である白梅堂に届けに行く場面。夜明けと同時に現れた義平は「植物学者・槙野万太郎君より釣書を持ってまいりました!」と店から出てきた文太(池内万作)に宣言する。台詞の一つひとつに万太郎から仲人を任された義平の覚悟が滲む、朝日に照らされながらの口上は朝ドラ史に残る名シーンとなるだろう。そのあまりの美しい一幕に涙が溢れた。万太郎と寿恵子を結びつけた義平には少しでも長生きして、2人を見守っていてほしいものである。
中田青渚(田邊聡子役)
本作で念願の朝ドラ出演を果たしたのが、田邊教授(要潤)の妻・聡子を演じた中田青渚だ。この物語には寿恵子をはじめ、頼もしく強い女性たちがたくさん登場するが、聡子もまたその一人である。当初はおどおどとした様子で、夫である田邊の顔色を伺うようなそぶりを見せていた聡子。だが、田邊が彼女の“静けさ”を愛していると言っていたように、どんな雑音も包み込み、心地よい静寂をもたらすような不思議な強さを中田は体現した。
また、聡子と寿恵子との間に芽生えた友情は本作の癒しでもあった。浅草に雷おこしを食べに行くという約束が果たされたのかどうかも気になるところだ。
他にも、厳しくも温かく孫である万太郎を見守り、最期に悪しき伝統を断ち切って天寿を全うしたタキ(松坂慶子)、万太郎に学びの楽しさを教えてくれた人生の師・池田蘭光(寺脇康文)、自身の“後悔”を語り、夢を諦めかけた万太郎の背中を押したジョン万次郎(宇崎竜童)、ワケあり住民たちを毎日変わらない笑顔で迎えた十徳長屋のりん(安藤玉恵)など、全ての俳優たちがその名演で一人ひとりの人物を私たちの心に刻み、「雑草という草はない」ことを証明した本作。物語が幕を閉じても、きっとその色とりどりの草花を折につけて思い出すだろう。
■放送情報
NHK連続テレビ小説『らんまん』【全130回(全26週)】
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45、(再放送)11:00 〜11:15
出演:神木隆之介、浜辺美波、志尊淳、佐久間由衣ほか
作:長田育恵
語り:宮﨑あおい
音楽:阿部海太郎
主題歌:あいみょん
制作統括:松川博敬
プロデューサー:板垣麻衣子、浅沼利信、藤原敬久
演出:渡邊良雄、津田温子、深川貴志ほか
写真提供=NHK