『罠の戦争』の成功に欠かせなかった草彅剛の存在感 カンテレならではの攻めたテーマも

『罠の戦争』を成功に導いた草彅剛の存在

 “正義”って、なんだろう。“優しさ”って、なんだろう。『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)がスタートしてから、毎日のように自分に問いかけてきた。正義を貫くには、弱いままではいられない。でも、人は力を持った瞬間に、優しさを失ってしまう。弱者に寄り添うために権力を手にした鷲津(草彅剛)が、どんどん悪しき風習に染まっていく様子を見て、悔しくもなったが、妙にリアルだなぁとも思った。

 ついに最終回を迎えた『罠の戦争』は、本当に先が読めない物語だった。黒幕と思われる人物が浮上したかと思えば、その裏にまた新たな黒幕が登場する。そして、最終的には主人公の鷲津までもが“悪”側に回ってしまいそうになるのだから、本当にハラハラさせられた。

 また、政治家の闇を暴くという攻めたテーマに挑戦できたのも、カンテレ制作ならではだろう。前クールの『エルピス-希望、あるいは災い-』(以下、『エルピス』)のようにギリギリまで踏み込んだ台詞や、「そこまで描いていいの?」と観ているこちらまで不安になってしまいそうなシーンの数々。

 政界や警察幹部の“闇”なんて、どこか遠い世界の話だと思ってしまいがちだが、『エルピス』も『罠の戦争』も、なぜか“私たちの物語”として考えることができた。Twitterの世界トレンド1位を獲得するなど、SNSが大盛り上がりした理由も、おそらくここにある。「自分だったら、どうするだろう……?」と意見を発信しているうちに、ドラマの世界に沼ってしまうのだ。

 そして、『罠の戦争』の成功に欠かせなかったのが、主演・草彅剛の存在感。最初はただ、物語が面白くて観ていたが、だんだんと“彼の演技が観たい”という気持ちが上回ってくるように。台詞がない“間”に、どのような表情をしているのか。「言葉ではこう言っているけど、実は裏があるのでは?」と草彅の表情に注目して、鷲津の気持ちを考察していくのが面白かった。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる