『罠の戦争』の成功に欠かせなかった草彅剛の存在感 カンテレならではの攻めたテーマも

『罠の戦争』を成功に導いた草彅剛の存在

 そこに面白さを感じることができたのは、やっぱり草彅の表現力の賜物だと思う。とくに、第10話で権力に取りつかれ魔物のようになってしまった時の表情はすごかった。政界の人々と話す時はもちろん、妻の可南子(井川遥)の前でも、感情をなくしたロボットのような姿に。その姿は、弱き者の味方というよりは、冷徹な権力者。それまで、「鷲津頑張れ!」と全力で応援してきたからこそ、急に彼のことが“嫌な奴”のように思えてしまって苦しかった。

 でも、その苦しさがあったからこそ、最終話での喜びも大きかったのだろう。権力者たちを罠にハメているつもりが、いつの間にか自分が権力という名の罠にハマっていたと気づいた時、鷲津がちゃんと立ち止まれる人間で本当によかった。

 そして、正義や優しさの本質は、衆議院議員になった可南子がきっと教えてくれる。公設秘書として彼女を支えながら、鷲津も本物の強さについて考えていくのではないだろうか。

 本当に上に立つべき人間は、どんな時でも“信念”を貫ける人。権力を手に入れたからといって、決して欲張らない。だけどやっぱり人は弱いから、上に立つと下を見れなくなってしまうし、自分は偉いんだと勘違いしてしまいそうになる。ふつうに生きていてもそうなのだから、“権力者”と呼ばれる人々は、日々その葛藤と戦っているのだろう。

 権力を手に入れて、変わってしまった鷲津。そんな彼をいちばん近くで見てきた可南子は、上に立っても信念を揺らがずに持ち続けることができるのだろうか。彼女の存在が、私たちの希望になってくれることを願っている。

■配信情報
『罠の戦争』
TVer、FODにて配信中
出演:草彅剛、井川遥、杉野遥亮、小野花梨、坂口涼太郎、白鳥晴都、小澤征悦、宮澤エマ、飯田基祐、本田博太郎、田口浩正、玉城裕規、高橋克典、片平なぎさ、岸部一徳ほか
脚本:後藤法子
演出:宝来忠昭
演出・プロデューサー:三宅喜重
プロデューサー:河西秀幸
音楽:菅野祐悟
主題歌:香取慎吾×SEVENTEEN「BETTING」(Warner Music Japan)
制作著作:カンテレ
©︎カンテレ
公式サイト:https://www.ktv.jp/wana/

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「国内ドラマシーン分析」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる