『罠の戦争』鷲津の復讐劇が完結 草彅剛がもたらしたエンターテインメントの王道

『罠の戦争』草彅剛が生んだエンタメの王道

 3月27日放送『罠の戦争』(カンテレ・フジテレビ系)最終話で、鷲津(草彅剛)の復讐劇が完結した。

 権力に魅入られた人間の末路。権謀術数と勢力の誇示、際限ないだまし合いを重ねるうちに迷路に迷い込み、気づくと出られなくなっている。八方に敵を作り、従わない人間を切り捨てるそばから、自分を支えてくれた人々が1人、2人と去っていく。気づいた時にはもう誰もいなくなっていた。

 眞人(杉野遥亮)は最初の一人だった。自ら怪文書をばらまいたと名乗り出た眞人は、決死の覚悟で鷲津をいさめるが、鷲津には効かない。鷲津は「クビだ。今度同じことをしたら法的措置を取る」と問答無用の口調で告げた。竜崎総理(高橋克典)から鷹野(小澤征悦)の弱みを握るように命じられた鷲津は、秘書の蛍原(小野花梨)に探らせようとするが、悩んだ末に蛍原は拒否。「もう私の支えたかった鷲津さんはいません」と伝えて、返ってきたのは「退職願、書いといて」というそっけない一言だった。

 「わかってないんですね。何も」。記者の熊谷(宮澤エマ)にあざ笑われ、妻の可南子(井川遥)からは離婚届を突き付けられる。孤立化する鷲津に追い討ちをかけるように、警察が訪ねてくる。眞人が通報したのだ。週刊誌のスクープも続き、事態の収拾を図るため、竜崎は鷲津に首相補佐官の辞任を求めた。

「変わっちゃったよね、あの人。私たちが思ってる以上に、もう遠くに行っちゃったのかもしれない」(可南子)

 鷲津が陥った権力という罠。力に魅了され、力を行使することに快感を覚える。力を持つことが自己目的化し、人間を手段としてしか見られなくなる。もし私たちが同じ立場なら、避けることはできただろうか。おそらくわかっていても難しいだろう。権力の魔性は人間の弱さと表裏一体で、善意を仮装して忍び寄り、すべてを飲み込んでしまうからだ。

 鷲津が正気に返ることができたのは、かけがえのない存在がいたからだ。鷲津は可南子の思いに気付かず、泰生(白鳥晴都)に鷲津が変わってしまったのは自分のせいだと思わせた。何よりも守りたいものを自分が壊していたことに気付いたことで、鷲津は一人の夫、父親に戻った。いじめっ子を注意する泰生はかつての自分であり、意識不明の重傷を負っても恐れずに信念を貫く息子を見て、鷲津はしなくてはならないことを思い出した。

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