『VIVANT』は日曜劇場を新たなステージに押し上げる? 演出・福澤克雄の過去作から予想

『VIVANT』は日曜劇場を変えるか

 2月27日、エンタメ界を驚かせる新作が発表された。その作品は、7月期のTBS日曜劇場『VIVANT』。『半沢直樹』(TBS系)以来、3年ぶりに日曜劇場の主演を務める堺雅人のほか、阿部寛、二階堂ふみ、松坂桃李、役所広司と“主演”俳優がずらりと並んだ。

 堺は『半沢直樹』、阿部は『下町ロケット』『DCU』『ドラゴン桜』、役所は『陸王』といずれもTBS日曜劇場で主演を務めている役者陣であり、原作・演出を『半沢直樹』をはじめとした福澤克雄が手がけることもあり、まさに“日曜劇場オールスター”と言っていい陣容だ。

 ドラマ評論家の成馬零一氏は、演出の福澤について、「池井戸潤ドラマのスタイルを作った人」とその手腕を語る。

「ナレーションの使い方や、“顔相撲”とも表現された役者のアップのカットを多数使用する演出、いうなればドラマの“歌舞伎化”を推し進めた人のイメージがあります。それと同時に、群像劇を描くのが本当にうまい方で。メインキャラクターの魅力を引き出すのはもちろん、新人俳優が演じるような端役まで、福澤さんの演出作品は強く印象に残るキャラクターが非常に多い。『半沢直樹』や『下町ロケット』で福澤さんとタッグを組んでいた伊與田英徳プロデューサーの力も大きいと思いますが、日曜劇場をきっかけに飛躍した俳優も多いですよね」

 しかし、『VIVANT』は池井戸潤原作ではなく、完全オリジナルの作品。まだあらすじなども明らかになっていないが、この数年で急速に変化したドラマ視聴方法の変化が反映されているのではないかと成馬氏は分析する。

「完全オリジナルというのは、TBS日曜劇場の新たなステージを見越しているように思います。2022年の『マイファミリー』や、現在放送中の『Get Ready!』など、池井戸潤原作に代表される勧善懲悪の企業ものではない作品がすでに作られていますが、海外ドラマ作品の影響やドラマ視聴方法の変化がそこにあるように感じています。次話への引きや、考察要素を散りばめるには、当然原作ものよりもオリジナルの方がいい。リアルタイムの放送でテレビドラマを観る視聴者が年々減っていく中で、海外ドラマと同じ土俵で戦うにはこれまでと同じことを続けていては駄目だと作り手たちも考えているのだと思います。現在は地上波ドラマも放送後すぐにディズニープラスやNetflixで配信される作品が増えて、日本以外でも観ることができるようになりました。『日本人だけに観てもらえればいい』というところから、『世界各国の人にも楽しんでもらえるように』という考えに作り手たちも本格的にシフトしているのではないでしょうか」

 現時点で物語を予想できそうな情報は、堺(信念)、阿部(執念)、二階堂(愛)、松坂(信頼)、役所(正義)が演じるキャラクターのキャッチフレーズと、ビジュアルに記された「敵か味方か、味方か敵か」のフレーズ程度。成馬氏は、「『ルパン三世』のような作品もありでは」と驚きのタイトルを挙げる。

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