『おむすび』は最終週でなぜ物語を“進めた”のか? 制作陣が意図した現実と地続きの未来

NHK連続テレビ小説『おむすび』が現在放送中。平成元年生まれの主人公・米田結(橋本環奈)が、どんなときでも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。
ついに迎えた最終週。第121話では、結が勤務する病院で知り合った児童養護施設で暮らす少女・詩(大島美優)が、「しばらく泊めてもらえませんか?」と歩(仲里依紗)のもとを訪ねてくる。

2、3日の間、詩を受け入れることを決めた歩は、自身がCEOを務めるアパレル会社で詩を雇いはじめ、生活を共にするうちに距離を縮めていく。そして第123話、歩が「詩の未成年後見人になる」と結に告げるが、この時点で残り2話。
これほど大胆な構成について、制作統括の真鍋斎は「通常、朝ドラの最終週ではエピローグ的な話が続くものですが、『おむすび』は何かを成し遂げた女性の物語ではないので、ドラマが終わった後にも彼女たちの人生は続いていくだろうと。そういった一種の願いも込めて、“詩がやってくる”という新たな展開を描きました。つまりは最後までストーリーを緩めずに、回収編ではなく物語を前に進める構成にしたんです」と語る。
同じく制作統括の宇佐川隆史も「詩は私たちの未来であり、今でもあるように感じています。彼女の不安や置かれた状況は決して簡単なものではありませんが、それでも生きていかなければいけない。そのような状況にある人たちに対して、米田家がどう向き合っていくのかが、私たちが伝えたいメッセージの一つであり、『おむすび』らしさなのだと思います」とした。

詩を“社員として雇う”のではなく、“未成年後見人として育てる”という踏み込んだ展開には驚かされたが、真鍋は「そうした選択はものすごく重いことであるかのように捉えられますが、令和になった今、新しい家族のあり方へのブレイクスルーにならないかなと。実は、最初に脚本の根本(ノンジ)さんは『歩が養子として詩を迎える』とおっしゃっていました。ですが、養子にすると相続の問題など家族を巻き込んだかなり大きな展開になってしまう。もし聖人や愛子、歩が亡くなったときに糸島の土地は誰が継ぐのか、神戸の土地は誰が継ぐのか、という問題もはらんでくるので、1週では描き切ることができないんです」と説明。
さらに、「もう一つ里親制度もありますが、これは少し概念が異なるというか。児童養護施設から社会的養護が必要な子どもを委託されるかたちになるので、“詩を引き取る”ということとはまた少しニュアンスが違うんですよね。そういった中で、未成年後見人という比較的柔軟性があり、一番リアリティがあるパターンを選択しました」と明かした。