引き継がれた第1作の“魂” 『プレデター:ザ・プレイ』の続編映画としての理想的な姿勢
そして、もう一つ注目すべきは、ヨーロッパからの入植者たちの存在だ。彼らの多くは、粗野で危険な存在として描かれ、それは初期西部劇においてネイティブアメリカンがそのように表現されていたことへの皮肉な裏返しであると考えられる。現在では多くの国で禁止されている、狩りの獲物の脚を挟むレッグホールド・トラップ(トラバサミ)を使用していることも、自分が仕留める生命に敬意を払わない傲慢さの象徴となっている。この生命軽視の姿勢は、本作でも示されているように、入植者たちがアメリカバイソンを大量に殺戮してきた歴史にも表れているといえよう。それは、マウンテン・ライオン(クーガー)と正面から向かい合って勇敢さを示そうとする部族の態度と好対照となっている。
もちろん、狩られる側の獲物(プレイ)の立場からすると、狩り(ゲーム)は身の危険でしかないが、生命を奪う行為に手を染めるのならば、最低限相手に敬意を払い、狩る側も一定のリスクを払うことが、せめてもの礼儀なのではないか。その意味でネイティブアメリカンと「プレデター」には、一部で通じるところがあるのかもしれない。
逆に、環境や生命にとって真の脅威になるのは、ヨーロッパからの入植者に代表される、産業革命を礎とした大量生産、大量消費の文化であろう。いまはアメリカを含め、世界で「持続可能な開発目標」が掲げられるようになったが、その裏には、このような過去の罪と、環境破壊や汚染がもたらした、気候変動などの新たな脅威の存在がある。そこで見直されなければならないのが、自然や生命に敬意を払う、ネイティブアメリカンの思想なのではないか。
本作の企画はディズニーによる20世紀スタジオの買収の前から存在していたという。だから本作の製作はディズニーによって主導されたわけでもなく、ましてや初めから配信作品として企図されていた作品というわけでもないはずだ。むしろもともとの製作者たちは、本作が独占配信での公開になったことを残念に思っていることだろう。『プレデター』を見事に現在の映画として蘇らせた本作『プレデター:ザ・プレイ』は、それが第1作の“魂”を引き継いでいるだけに、できれば映画館で新作として体験したかった一作である。
■配信情報
『ザ・プレデター:ザ・プレイ』
ディズニープラス「スター」にて、8月5日(金)より独占配信
©2022 20th Century Studios