『テッパチ!』は自衛隊をどう描く? 空自の実像に迫った『空飛ぶ広報室』との共通点

『テッパチ!』と『空飛ぶ広報室』の共通点

「わかった気になってひとまとめに語ることは不誠実だと思うからです」

 2013年4月期に放送された『空飛ぶ広報室』(TBS系)で、新垣結衣演じる主人公の稲葉リカが発した言葉だ。航空自衛隊(空自)の密着取材を続けるリカは、間近で隊員たちを目にし、自衛隊に対して抱いていた考えを改める。当初、戦闘機を「人殺しのための機械」と言い放ったリカは、自衛官の空井(綾野剛)や広報室長の鷺坂(柴田恭兵)との交流を通して空自の実像を理解していく。

 現在放送中の『テッパチ!』(フジテレビ系)では、投げやりな生活を送っていた国生宙(町田啓太)が陸上自衛隊(陸自)の訓練生となり、一人前の自衛官を目指す。第6話で2日間の総合訓練を全員の力で乗り越えた国生は、バディの馬場(佐野勇斗)と同じ部隊に配属され、上長に昇任した桜間(白石麻衣)と再会する。

 陸自を取り上げた連続ドラマの『テッパチ!』は、防衛省と陸自の全面協力を得た“本格仕様”が売りだ。装備や施設の貸与をはじめ、現職の自衛官がエキストラ参加し、ロケも駐屯地や演習場で実施。陸自や訓練生のあるあるネタも豊富に散りばめられており、アイロンがけや半長靴磨きへのこだわり、食事の争奪戦や隊員クラブでの息抜き、筋トレマニアの存在など、駐屯地の日常を身近に感じることができる。前期教育で男女合同訓練がないことや、登場人物のイケメン/マッチョ率が高すぎることをのぞけば、リアリティを重視した仕上がりといえるだろう。

 一方で自衛隊といえば、過去にはその存在をめぐって合憲論争が繰り広げられたが、政治的な緊張を喚起するテーマであることは否めない。ここでは詳細に立ち入らないが、『空飛ぶ広報室』で言及されたように、自衛隊を侵略戦争や暴力行為と結びつける言説は今なお見られる。自衛隊にまつわるトピックはある種のタブーとされてきたが、これに正面から斬り込んだのが『空飛ぶ広報室』だった。

 『空飛ぶ広報室』第8話では、空自が作成するPVの主人公に空井と旧知の仲である芳川(南明奈)が選ばれる。整備員の芳川は輸送機のパイロットだった父親の思いを受け継ぎ、空自に入隊した。しかし、完成したPVには「戦争賛美」「感動をあおる姑息なイメージ戦略」との批判が寄せられる。この批判は『空飛ぶ広報室』という作品自体を射程に含むものであり、批判が妥当であるかは人によって見解が異なるだろう。一つ言えることは、『空飛ぶ広報室』がドラマを通して空自とそこで働く人々の姿を伝えたという事実である。

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