『テッパチ！』は自衛隊をどう描く？　空自の実像に迫った『空飛ぶ広報室』との共通点

　『テッパチ！』で自衛隊の存在意義について触れる場面は多くない。第4話で桜間が射撃訓練を前にして、「銃は人を殺めるためのものではなく、人を守るためのもの」と訓示するシーンがあるくらいだ。むしろ、ここでは候補生たちの志望動機が問題になる。一匹狼で仕事にあぶれた国生をはじめ、愛人の子で家に居場所のない荒井（佐藤寛太）や父親を刺そうとして施設に引き取られた武藤（一ノ瀬颯）など、候補生たちは身寄りのない者が多い。彼らに対して、中隊長の八女（北村一輝）が家族代わりに面倒を見るという設定だが、それこそ「就職難にあえぐ若者を搾取する」という『空飛ぶ広報室』の指摘に当たるとも思える。

　『空飛ぶ広報室』が視聴者にゆだねた問題に『テッパチ！』は踏み込んでいると言えるし、問題が後景に退いたと捉えることもできる。いずれにせよ、個人の背景が絡むと単純な正義の問題に還元できない上、全国的に人材不足であり、様々な動機で自衛隊を志願する候補生がいることは事実である。ドラマでも言及されているように辞める者も多い。これらの事情を理解し、適切な距離感で接することが大事だ。

　8月17日から始まる第2部で、晴れて自衛官となった国生たちは災害派遣の現場へと出動する。様々な困難に直面する中で、自衛官として何を守るべきかという本作のテーマが前面に出てくると思われる。戦争の悲惨さを伝えるとともに、汗と涙、笑いと筋肉美をともなう最高のエンターテインメントを期待したい。

■放送情報
『テッパチ！』
フジテレビ系にて、毎週水曜22:00～22:54放送
出演：町田啓太、佐野勇斗、白石麻衣、北村一輝／佐藤寛太、時任勇気、一ノ瀬颯、坂口涼太郎、池田永吉、藤岡真威人（第1部）／工藤阿須加、桐山漣、久保田悠来、結木滉星、水沢林太郎（第2部）ほか
脚本：本田隆朗、関えり香、諸橋隼人
企画：渡辺恒也、江花松樹
企画・プロデュース：栗原美和子（共同テレビ）
プロデューサー：山崎淳子（共同テレビ）
演出：石川淳一（共同テレビ）、根本和政
制作協力：共同テレビ
制作著作：フジテレビ
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