『初恋の悪魔』徹底された多角的な視点 林遣都「他人の作ったゲームをしないこと」の意味

『初恋の悪魔』徹底された多角的な視点

 鹿浜の言葉を聞いた3人は、クイズを無視して、事件が起きた現場を再検証する。そして、事件の起きた犯行現場から、犯人が使用するドローンの遠隔操作の最長範囲である半径450メートルのエリアを割り出し、それぞれの事件が起きた場所と重なる地区に犯人の拠点があることを特定する。

 その後、小鳥が「犯人は歪んだ正義感を振りかざしている。世の中が自分の思い通りにいかないと考えている疎外感の持ち主だ」「犯人は一人暮らしの男で社会に恨みを持っている」と言うのを聞いた鹿浜は「警察気取りで、人を裁いて満足か?」「この犯人がしてることと僕たちがしてることは同じだ」「歪んだ正義感を振りかざしてるのは、僕たちも同じじゃないか」と意見をぶつける。4人の間に重い空気が流れる。

 それでも、服部を傷つけた犯人を許せない小鳥は、犯人を捕まえるために1人で現場へと向かうのだが、そこに刑事たちが現れ、犯人をあっさりと逮捕してしまう。自分が犯人だと想像した怪しい男が無関係だと知った小鳥は、自分が正義感に駆られて偏見に満ちた考えに取り憑かれていたことに気づき、深く反省する。

 本作のエンドロールには、ルービックキューブが象徴的なアイテムとして登場する。六面体のルービックキューブのように、ある角度から見たら赤だと思ったものが、別の角度から見ると青だったというような、多面的な視点が本作では繰り返し描かれている。

 第4話はそれが徹底されており、犯人のクイズを解けば犯人にたどり着けると馬淵たちが思い込んでしまったことも、小鳥が犯人のイメージを勝手に決めつけてしまったことも、先入観で視野が狭くなり、他の角度が見えなくなっている姿を描いていたと言えるだろう。この多角的な視点は、各登場人物に対しても向けられている。

 ヘビ女という別人格を抱えている星砂が、本当はヘビ女の方が主人格なのではないかと不安を抱いていることや、隣人の森園真澄(安田顕)を猟奇犯罪者だと決めつけて監視していた鹿浜の家に監視カメラを仕掛けられ「何者かに監視されていた」という視点の反転も、この第4話では描かれた。

 鹿浜が“考察”という言葉を使うことからも明らかなように、本作は馬淵たちが事件を考察する姿を描くと同時に、各登場人物の謎が少しずつ明らかになっていくという考察ドラマの構造を強く意識したドラマだ。同時に本作は、先入観に囚われた視野の狭い考察が陰謀論に陥ってしまうことの危うさも描いている。視聴者の考察と対峙し続けてきた坂元裕二ならでは問題意識が見え隠れする批評的な脚本である。

■放送情報
『初恋の悪魔』
日本テレビ系にて、毎週土曜22:00~22:54放送
出演:林遣都、仲野太賀、松岡茉優、柄本佑、佐久間由衣、味方良介、安田顕、田中裕子、伊藤英明、毎熊克哉
脚本:坂元裕二
演出:水田伸生ほか
プロデューサー:次屋尚ほか
チーフプロデューサー:三上絵里子
制作協力:ザ・ワークス
製作著作:日本テレビ
(c)日本テレビ
公式サイト:https://www.ntv.co.jp/hatsukoinoakuma/
公式Twitter:@hatsukoinoakuma
公式Instagram:@hatsukoinoakuma_ntv

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