マクロな視点から日本社会を切り取る WOWOWドラマの豊かさに触れる5選

WOWOWドラマの豊かさに触れる5選

 細部までこだわり抜いた映像美と重厚なストーリーがWOWOWドラマの魅力だが、その最前線と言えるのが、4月から配信中の『TOKYO VICE』だろう。

 本作は、アメリカの配信プラットフォームHBO Max、ハリウッドの大型コンテンツを手掛ける制作会社エンデバー・コンテント、そしてWOWOWの共同制作プロジェクトで、第1話は映画『ヒート』などで知られるマイケル・マンが監督を務めている。

『TOKYO VICE』(HBO Max / James Lisle)

 舞台は1990年代の東京で、外国人記者のジェイク(アンセル・エルゴート)の視点からヤクザの牛耳る闇社会の様子が描かれていく。外国人からみた日本人と日本社会がいかに奇妙な慣習に囚われているかがクールな映像で紡がれており、新聞社も警察もヤクザも国外から見れば得体の知れない存在なのだと実感させられる。この外国人から観た異国としての日本を追体験できることが本作一番の魅力だろう。当時の東京を知る人にとってはどこか懐かしい不気味な迫力に満ちた作品である。

 『TOKYO VICE』が大人の世界を描いた作品だとすれば、子どもの視点から日本社会の暗部をえぐるドラマが、上白石萌歌主演の『連続ドラマW 宮部みゆき「ソロモンの偽証」』だ。本作は、宮部みゆきの同名小説をドラマ化したもので、学校の屋上から転落死した男子生徒が警察によって自殺だと判断されたことに疑問を抱いた同級生たちが、亡くなった生徒をいじめていた男子生徒を被告として学校内裁判を開こうとする学園ミステリーだ。

『連続ドラマW 宮部みゆき「ソロモンの偽証」』

 「前篇・事件」「後篇・裁判」の2部作として発表された2015年の映画版が、原作に忠実な作品だったのに対し、ドラマ版では舞台を1990年代から現代に移し、生徒たちを中学生から高校生に変えるといった大胆なアレンジが施されている。

 90年代にはなかった、スマホやSNSの描写が挟み込まれることで、子どもたちをとりまく環境の苦しさがより際立っており、原作の魅力を損なうことなく、現代のドラマとして再構築されている。1話約50分、全8話という長尺を活かすことで各登場人物の背景を深く掘り下げた人間ドラマが展開されているため、原作小説や映画を楽しんだ方にも是非とも観てほしい。

 坂元裕二(脚本)×水田伸生(演出)のコンビと言えば、『Mother』(日本テレビ系)、『Woman』(日本テレビ系)、『anone』(日本テレビ系)といった女性を主人公にしたヒューマンドラマ3作で広く知られているが、WOWOWで2人が手掛けた『連続ドラマW モザイクジャパン』は、この3作とは全く違うアプローチで作られたドラマだ。

『連続ドラマW モザイクジャパン』

 本作は、AV(アダルトビデオ)を中心にさまざまな事業を手掛ける新鋭企業が移転してきたことでAVが地場産業となっている田舎町を舞台にした物語で、永山絢斗演じる主人公が就職した会社ではAVの撮影が至るところで行われている。好きになった同僚の女性も、かつての友達も祖父母もAVで食べている状況に主人公は違和感を示すのだが、次第に彼自身もAVの世界に呑み込まれていく。

 AVが題材で劇中にはヌードや性行為が続出するため、坂元裕二作品の中では色モノ的に思われがちだが、『カルテット』(TBS系)や『大豆田とわ子と三人の元夫』(カンテレ・フジテレビ系)といった他の坂元裕二ドラマと同様、台詞や物語が徹底的に作り込まれた社会派ドラマとなっている。性器を隠すモザイクを通して、様々な物事を曖昧に誤魔化そうとする日本社会の欺瞞を撃つR-15+指定相当の問題作である。

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