幽霊譚にのせてトラウマを描く『ポスト・モーテム』 監督の考えるホラー映画とその未来

『ポスト・モーテム』監督インタビュー

――ちなみに、『ポスト・モーテム』に影響を与えたと考えるホラー映画はありますか?

ベルゲンディ:精神的な繋がりか、はたまた直接的な繋がりがあるかはさておいて、『エクソシスト』と『ハロウィン』、そして『シャイニング』は製作時の私の考えに影響を与えたと言ってもいいでしょう。

――さきほどからいくつかの作品を挙げていただいていますが、現在お気に入りホラー映画監督は誰ですか?

ベルゲンディ:まず、『死霊館』を手がけたジェームズ・ワンですね。そして『IT/イット』シリーズのアンディ・ムスキエティ。両者は子供の感覚を忘れず、少しだけクレイジーな部分がある。彼らのような方が、今日において我々が必要とする良いホラー映画監督だと思います。ムスキエティ監督は今年の映画祭でも実際にお会いしましたが、私の『ポスト・モーテム』が受賞した賞が、彼が数年前『MAMA』という作品で受賞したものと同じだったのです。性格も面白いですし、私は彼が大好きですね。二人とも、このジャンルにおいて一線を画す存在です。

――『死霊館』シリーズは私も大好きで、ゴシックホラーの再起という点では『ポスト・モーテム』に通ずるものがあるかと思います。

ベルゲンディ:ちなみに、私が『ポスト・モーテム』の物語を書いたのは『死霊館』の製作が完了した頃だったんです。そして1年後、2013年に気がつかないうちに公開されていた。そこから7、8年の間にハンガリーでは多くのハリウッド映画が公開されるようになりましたが、その間私たちはたった1作の映画、つまり『死霊館』以前に生まれた本作をようやく作れたといったところで、それくらいハリウッドの映画産業とハンガリーのそれとの規模の違いは大きいのです。

――つまり、『ポスト・モーテム』の製作に約6、7年かかったということなんですね。

ピーター・ベルゲンディ監督

――これからの時代、ホラー映画はどういった局面を迎えると思いますか?

ベルゲンディ:現在も続く世界的なパンデミックという経験が、さらに新たなレイヤーやカラーをこのジャンルにもたらし、将来の映画作りに大きな影響を与えると思います。たとえ直接的にパンデミックのことを描いた作品でなくても、人々がこの状況下で感じた“感情”や“閉鎖感に対する恐怖”というのは確実に影響を与え、ホラー映画というジャンルの一部になるでしょう。

――個人的に監督がこれから期待したい、観たいホラー映画はありますか?

ベルゲンディ:『死霊館』シリーズの新作は間違いなく楽しみにしていますね。1作目や2作目のルーツに戻ることを期待していますし、先にお話ししたムスキエティ監督が次に何を作るのかも予測がつかないのでワクワクしています。しかし、彼なら素晴らしいものを作ってくれるとわかっています。また、スティーヴン・キング原作のミニシリーズ『ザ・スタンド』のリメイク版も気になっています。

――今後、監督ご自身が作る映画や展望についてもお聞かせください。

ベルゲンディ:現在、すでに二つのプロジェクトを抱えています。一つは第一次世界大戦を舞台にしたもの、もう一つは第二次世界大戦を舞台に実在したスパイ、セント=ジェルジ・アルベルトについて描く物語です。彼はのちにノーベル賞を受賞した人物でもあります。なのでどちらも戦争映画になります。次の作品も日本で上映されると嬉しいですね。

■公開情報
『ポスト・モーテム 遺体写真家トーマス』
「未体験ゾーンの映画たち 2022」にて、2月4日(金)公開
監督:ピーター・ベルゲンディ
出演:ヴィクトル・クレム、 フルジナ・ハイス、 ガブリエラ・ハモリ、 ユディット・シェル
配給:プレシディオ
後援:駐日ハンガリー大使館、リスト・ハンガリー文化センター
2020年/116分/ハンガリー/ハンガリー語/カラー/シネマスコープ/5.1ch/字幕翻訳者:船越智子/自主規制G相当/原題:Post Mortem
(c)SZUPERMODERN STUDIO

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