『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』真髄への回帰 丁寧に構築された恐怖と愛の物語に満足
私たちの『死霊館』が戻ってきた。ホラー映画界で最も愛されているパワーカップルのウォーレン夫妻が、再び実話に基づいたケースに挑む『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』はシリーズのファンが安心して楽しめる、非常に丁寧な作品だと言える。
※本稿には『死霊館 悪魔のせいなら、無罪。』のネタバレが含まれています。
映画で描かれるアーニー・ジョンソン事件の真相
今回彼らが挑むのは、かの有名な“アーニー・ジョンソン事件”。英語ではタイトルにもなっている「The Devil Made Me Do It case」として知られている。基本的には映画で描かれたように、アーニーが婚約者デビーの雇い主であり家主でもあるアレン・ボノ(映画ではブルーノ・ソールズ)を刺殺する事件が発生し、アメリカ史上初めて裁判の証拠として悪魔的な存在を訴える事態に発展した。『死霊館』の醍醐味といえば、実話に基づくケースだとわかって映画を観始めても、あまりにも怖かったり壮絶だったりで映画が終わる頃にはフィクションだと錯覚してしまうのに、エンドクレジットで実際の時の写真や映像、音声が流れてギョッとさせられることにある。今回も、本物のウォーレン夫妻がテレビに出演した際このアーニー・ジョンソン事件の顛末を話す映像や、エクソシズム中に録音された悪魔の肉声が流れていた(YouTubeには映画に登場したテレビ番組映像も存在する)。
本作は、もしかしたら過去の『死霊館』2作品に比べて“恐怖度”がマイルドめに抑えられている印象を受けるかもしれない。しかし、テレビで夫妻が話すことに耳を傾けていると、それくらいでちょうど良かったのかもなと思えるほど実話は恐ろしい。簡単に映画との相違をまとめると、ウォーターベッドはないものの確かに当時11歳のデヴィッドは引っ越しの手伝いの最中に奇妙なシミのある寝室で老人の見た目をした邪悪な存在に襲われていた。それ以降、彼は目に見えない存在に苦しめられ、両親はウォーレン夫妻に助けを求める。ロレイン・ウォーレンは少年に会った時、彼の隣に黒い煙のようなものが渦巻いているのを見た。何回かに渡って行われたエクソシズムの中で、デヴィッドは自分の母親や祖母を傷つけようとする。6人もの神父、そしてそのうち3人がバチカンから来た優秀で権威ある神父だったにもかかわらず、彼らはデヴィッドに取り憑いた存在を恐れ、事態は難航した。なぜなら、取り憑いていたのは映画のように1体ではなく、43体もいたからだ。ある晩、エド・ウォーレン曰くデヴィッドが拘束を逃れてバスルームに立て篭もると、中から凄まじい悲鳴が聞こえたそう。このエピソードは、少しアレンジされているが映画の冒頭にある浴室のシーンに反映されている。
そして現場にいたデヴィッドの姉、デビーの婚約者であり“ザ・好青年オブ好青年”と夫妻が認める19歳のアーニー・ジョンソンがある時、悪魔に挑戦してしまうのだ。「俺を代わりにしろ!」と。夫妻曰く、こういった悪魔的な存在に挑戦してしまった時、肝心なのはその結果がすぐに現れないことだと言う。時間が経ち、その人間が最も弱いと感じる瞬間を悪魔は虎視眈々と狙っている。結果、2時間の記憶を失ったアーニーはその最中で殺人犯してしまい、平和な街ブルックフィールドで初めて起きた殺人事件として大きく報道された。