『おかえりモネ』“呪縛”から解き放たれた百音たち 初めて向き合った震災の日
「なんで地元で頑張ってるのが偉いみたいになるの?」
幼なじみ6人が集結し、同窓会のような楽しい雰囲気が明日美(恒松祐里)のその一言で変わった『おかえりモネ』(NHK総合)第78話。彼らの姿に誰もが既視感を覚えたのではないだろうか。
共に青春時代を歩んだ人たちが集まると、最初は思い出話に花が咲く。側から聞けばちっとも理解できないようなくだらない話。だけど“現在(いま)”の話になった途端、空気が張り詰める。一緒に走っていたはずの道が、地元を出る出ない、就職するしない、結婚するしないといった選択の連続で枝分かれし、ふと気がつくと周りには誰もいない。違いばかりに目がいって、どんどん話せないことが暗黙の了解で増えていく。
百音たちは震災の日から、互いの悩みを打ち明けられないでいた。一人ひとりの葛藤や苦しみがあの日に繋がっていて、簡単には触れられないからだ。“被災者”と一括りにされることもあるが、実際にはそれぞれ違う経験をしている。大切な人や家を失った人、地元から離れることを余儀なくされた人、多くの死に直面した人……他人と自分が受けた傷の大きさを比べて、辛い、悲しいといった言葉を飲み込んだ人も大勢いるだろう。
ここで初めて、百音たちは寺の息子であり、たくさんの遺体を目にした三生(前田航基)が抱えていた思いを知る。何も考えずにその存在を信じていられたUFOは未来への希望であり、「祈ってもUFOは来ない」と諦めの表情を浮かべる亮が離しかけた手を光生は掴んで未来を語った。
「みんなバラバラのところいたって、これからだってUFOは呼べんだよ。信じてるよ。手なんか繋がなくたっていい。心を一つになんてしなくたっていい。俺らはUFOだって、なんだって呼べんだよ」
その頃、別の場所では莉子(今田美桜)たちが菅波(坂口健太郎)を含めて震災について語っていた。
「生きてきて何もなかった人なんていないでしょ。何かしらの痛みはあるでしょ。自覚してるかしてないかは別として」
「そうだね、毎日笑ってる人も何かしら痛みはあるよね。何も言わないだけなのかもね、みんな」
ずっと幸せに生きていた自分が報道に携わってもいいのかと考え込む莉子に対して、内田(清水尋也)と野坂(森田望智)が語ったことを『おかえりモネ』は最初から一貫して描いてきた。