神木隆之介はいかにして“国民的俳優”になったのか 成長の背景にあるのは“安心感”?

神木隆之介、いかにして“国民的俳優”に?

 2005年に公開された『妖怪大戦争』は、神木隆之介が12歳(公開当時)にして単独初主演を務めた作品であり、2000年以降に公開された実写日本映画で唯一、小学生以下の俳優が単独主演を務めて興行収入20億円に到達した作品だ(参考までに、2008年の『パコと魔法の絵本』はアヤカ・ウィルソンと役所広司のダブル主演。『妖怪大戦争』以前では安達祐実主演の『REX 恐竜物語』まで遡ることになる)。

 物語は神木演じる少年が、“麒麟送子”と呼ばれる正義の味方に選ばれたことをきっかけにして妖怪たちが見えるようになり、彼らと共に魔人が率いる悪霊軍団と対決するという王道アドベンチャーだ。特殊メイクで妖怪に扮した共演陣の豪華さや、夏休みに公開されたことなど、いくつものヒットの要因が考えられるが、いずれにせよこの作品が神木のネームバリューを強固にしたことは言うまでもないだろう。

 幼少期からCMなどで活躍し、6歳でドラマデビュー。2000年に放送された『QUIZ』(TBS系)では狂言誘拐を仕組む少年として驚異的な演技を見せれば、翌年には『千と千尋の神隠し』(以下、『千と千尋』)で坊の声を担当して映画に初出演。実写映画では『踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!』(以下、『踊る2』)で深津絵里演じるすみれが追うスリ一家の子供として登場したのが最初である。と、この辺りのキャリアに関しては他の子役俳優たちと比較して充実したものであることは間違いないが、あくまでも “人気子役”の括りに含まれるようなものであった。

『バクマン。』(c)2015映画「バクマン。」製作委員会

 しかし『妖怪大戦争』を契機に、子役からの卒業や若手俳優が群雄割拠する20代へと飛び込んでいく過程で、途方もない作品歴をたどることになる。あえて映画だけに限定するが、そのフィルモグラフィーを振り返ってみると『劇場版 SPEC』のようなドラマの劇場版から『るろうに剣心』や『バクマン。』といった漫画の実写化。行定勲監督の『遠くの空に消えた』に吉田大八監督の『桐島、部活やめるってよ。』といったコアな映画ファンから賛辞を集める作品では主演を飾り、アニメーションではジブリ作品から『ドラえもん』、細田守作品や新海誠作品、ひいてはヨーロッパアニメの吹き替えを担当するなど、あらゆるターゲット層を満遍なくカバーしていく。

 しかも実写・アニメ・吹き替え、カメオ出演まで含めて2020年までに出演した映画は45本。そのうち23作品が日本の映画興行のヒットの目安といわれる興収10億円を超えているのである。『千と千尋の神隠し』と『踊る2』、『ハウルの動く城』『君の名は。』の100億越え作品がブーストをかけているとはいえ、出演作の累計興収はざっと1600億円以上。映画の入場料金の平均を1300円程度と見積もって試算してみても、延べ人数として日本の人口にほぼ等しい1億2000万人が映画館で神木の演技を味わっていることになる。まさに国民的俳優という名にふさわしい活躍ぶりだ。

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