杉咲花、声優としても輝きを放つ多彩な表現力 『サイコト』スマイル役の笑い声は必聴

杉咲花、声優としても輝きを放つ多彩な表現力

 朝ドラことNHK連続テレビ小説の主演を務めた俳優は次の作品への出演まで長いインターバルを取ることが多い。

 例えば、『スカーレット』でヒロインを務めた戸田恵梨香はさくら役が好評を呼んだ『俺の家の話』(TBS系)放送まで10カ月、『エール』で主演を張った窪田正孝はこの10月からスタートする主演ドラマ『ラジエーションハウスII~放射線科の診断レポート~』(フジテレビ系)まで11カ月空いている。昨今のコロナ禍も関係していることは否めないが、1年近くの長期撮影終わりということと、俳優にとって一つのターニングポイントである朝ドラ後の注目が向く作品選びということも一つにあるだろう。

 今年5月に幕を閉じた『おちょやん』のヒロイン杉咲花が主演を務めるドラマ『恋です!~ヤンキー君と白杖ガール~』(日本テレビ系)が10月から放送を開始する。今冬には新ヒロインに選ばれた映画『99.9 -刑事専門弁護士- THE MOVIE』の公開も控えており、この10月が『おちょやん』後の本格的リスタートとも言えるだろう。そんな杉咲にとってのインターバル期間に公開された一作がある。劇場アニメ『サイダーのように言葉が湧き上がる』だ。

 同じく今夏公開されている細田守監督の『竜とそばかすの姫』を例に、ジブリ映画や新海誠監督の作品でも俳優が主要キャストを演じることは珍しくなくなった。その逆も然りで、民放の連続ドラマや大河などに声優が出演することでSNSを中心に話題になる光景もよく見られることであり、その作品にあった俳優/声優を起用しながら相互関係を保っているという印象だ。

 杉咲はこれまで2014年公開の『思い出のマーニー』、さらに2017年の『メアリと魔女の花』と、スタジオジブリ、スタジオポノック作品への出演経験がある。特に『メアリと魔女の花』は米林宏昌監督がジブリ退社後に初めて手がけた長編作で、その担い手として杉咲はメアリ役で主演を務めている。『となりのトトロ』のメイを彷彿とさせる『思い出のマーニー』での彩香役、不安を抱えながらも真っ直ぐな生き方を見せるメアリ。「声優としての技術ではなく、今までと同じように、自分の中に沸き出ることを表現できたらと思っていました」と当時のインタビューで話しているように、杉咲にあるのはその役を演じるという俳優として変わらぬスタンスだ(参照:映画.com「杉咲花、新時代告げるヒロイン・メアリに命注いだ“魔法の5日間”」)。

 もちろん、その姿勢は『サイダーのように言葉が湧き上がる』でも一貫しているのだが、今作ではより等身大の杉咲花がそこにいる。杉咲が演じるのは、コンプレックスを隠すためにマスクをしている少女・スマイル。市川染五郎が演じるチェリーと出会うことで、そのコンプレックスと向き合い、成長し、恋に落ちていく。スマイルは劇中のほとんどでマスクをしているため、その声色で表情を伝えなければいけない。過去の2作でも示されていた聞き取りやすく、芯が通っていて、なおかつ感情のこもった演技は、今作のスマイル役に適任である。

 彩香役、メアリ役と比較すると、明るい“陽”のイメージに振り切ったスマイルは、1万人のフォロワーを抱えるアイドル的要素も持っている。スマホを片手にライブ配信するその声色は、アニメーションを通してだからこそ見れる(聞ける)違和感のない杉咲の演技だ。

関連記事

インタビュー

もっとみる

Pick Up!

「コラム」の最新記事

もっとみる

blueprint book store

もっとみる