神木隆之介はいかにして“国民的俳優”になったのか 成長の背景にあるのは“安心感”?

神木隆之介、いかにして“国民的俳優”に?

 そして現在28歳にして、キャリアは25年。なぜここまでひっきりなしにヒット作に恵まれているのかを考えれば、それはもはや神木が出演していることで発生する安心感に他ならないだろう。『妖怪大戦争』のヒットで得た業界的な信頼感もさることながら、年が近い観客にとっては一緒に歳を重ねてきた友人のような、年上の世代にとっては親戚の子供の成長を見守るような感覚が味わえるという、子役出身俳優にしかできない最大のメリットを存分に活かす。かつ昔から変わらぬ雰囲気を維持したまま穏やかな好青年に成長してくれたことがさらに安心感を高めていく。完全に主演級の俳優でありながら、助演として引き立て役に回ることができるのも強い。

 そんな神木が『妖怪大戦争』から16年を経て、寺田心主演で製作された『妖怪大戦争 ガーディアンズ』に出演していることが明らかになったのは7月初旬に行われた“バトンタッチセレモニー”でのことだ。劇中で神木が演じるのは、寺田演じる主人公ケイの担任の加藤先生役。前作を観ている人はその名前にどこかピンとくるものがあるだろうが、それはさておき、物語のカギとなるフォッサマグナについて熱を込めて語る序盤の教室のシーンで、2000年代を代表する天才子役だった神木から現在の子役界で最前線に立つ寺田へのバトンが繋がれる瞬間が訪れるのは実に感慨深いものがある。

『るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning』(c)和月伸宏/集英社 (c)2020映画「るろうに剣心 最終章 The Final/The Beginning」製作委員会

 ここのところ、神木はこうした“サプライズ出演”が相次いでいる。『天気の子』では上白石萌音らと共に『君の名は。』の主要キャスト勢がそろって同じ役柄でカメオ出演を果たし、今年公開された『シン・エヴァンゲリオン劇場版』では極めて重要なシーンで、とても重要なキャラクターの声を担当し観客を驚かせた。そして『るろうに剣心 最終章 The Final』でも、前作・前々作で演じた瀬田宗次郎役としてカムバック。一緒に独立して事務所を立ち上げた盟友・佐藤健の代表作のフィナーレに花を添えた。

 “サプライズ出演”が“サプライズ”としてその効果を発揮させるためには、その見た目や声を誰もが一瞬で認識できる必要がある。そういった意味では、前述したように老若男女や作品の趣味趣向にかかわらずあらゆる範囲をカバーし、まぎれもなく“誰もが知っている俳優”になっている神木はその役回りを担ううえでこの上ない適任だ。ちなみにこの2021年の出演作を先程の累計興収に合算すれば1800億近くまでなるのだろうか。“2000億の男”になるのもそう遠くないだろう。

 スター俳優でも苦労人でもない独特の俳優像を確立し、画面に映らないところで様々な努力や苦悩をしてきたに違いないが、それを観る側に感じさせないだけの朗らかさと余裕がある。神木がこの20年で築き上げてきた、子役出身俳優のあまりにも理想的な成長記録を継承できる逸材は、そうそう現れるものではないだろう。

■公開情報
映画『妖怪大戦争 ガーディアンズ』
8月13日(金)全国ロードショー
出演:寺田心、杉咲花、猪股怜生、安藤サクラ、神木隆之介、大倉孝二、三浦貴大、大島優子、赤楚衛二、SUMIRE、岡村隆史、遠藤憲一、石橋蓮司、柄本明、大森南朋、大沢たかお
監督:三池崇史
製作総指揮:角川歴彦、荒俣宏
脚本:渡辺雄介
音楽:遠藤浩二
制作プロダクション:OLM
配給:東宝、KADOKAWA
(c)2021『妖怪大戦争』ガーディアンズ
公式サイト:https://movies.kadokawa.co.jp/yokai/
公式Twitter:@yokai_movie

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