華の悩みに吟が寄り添う 『エール』東京の関内家は若者のシェルターに?

華の悩みに吟が寄り添う 『エール』東京の関内家は若者のシェルターに?

 やりたいことがない。自分なりに頑張っているけど、周りが認めてくれない。『エール』(NHK総合)第102話で、華(古川琴音)が打ち明けたのはそんな悩みだった。

 子どもは親の背中を見て育つと言われる。風邪を引いた裕一(窪田正孝)にお粥を作る華は、両親譲りの心の優しい子に育っていた。「華、よく気が利くね。いい子に育った」と、裕一は音(二階堂ふみ)に語りかける。

 実は、華はひそかに悩んでいた。裕一は有名な作曲家で、音はオペラ『ラ・ボエーム』のオーディションに向けて、ベルトーマス羽生(広岡由里子)のもとでレッスンの日々を送る。思いを寄せる渉(伊藤あさひ)は高校球児として活躍。夢を追いかける彼らと自分を比べて、自分には何もないと感じてしまうのだった。

 渉からは裕一のすごさを力説され、家の手伝いをしようとすれば音に制止される。偉大な両親を持った気苦労に加えて、音に対しては「自分を産むために歌手を諦めたんじゃないか」という負い目もあった。音は第82話でも華から同様のことを聞かれており、「私があなたを選んだの」と答えているが、華の中では今なお後を引いていた。

 父と母の愛を一身に感じる。だからこそ華の悩みは深い。鬱積していた感情は音の一言をきっかけに堰を切ったようにあふれ出した。「やりたいことがないと駄目なの? 目標あるのがそんなに偉いの?」と疑問をぶつけてから、「私を産んだせいでお母さんの人生を変えちゃったのなら申し訳ないと思って、こっちは精いっぱい頑張ってるのに」と思いのたけを吐き出し、「お母さん、私の気持ち全然わかってない」と言い残して飛び出した。

 いちばんわかってほしい人にずっと言えなかったこと。音を傷つけてしまったと華は胸が痛んだだろう。そんな華は吟(松井玲奈)の家にいた。華の気持ちが一番わかるのは吟かもしれない。「若い頃はやりたいことなんてなかった」と話し、華と並んで腰を下ろすと、「才能って大げさに聞こえるけど、普通の日常の中に転がってると思うのよね」とつぶやく。

 吟の華に対する寄り添い方が絶妙だ。さりげなく、同じ目線で共感から自身の経験を伝え、最後は「若いうちはいっぱい悩みなさい」と背中を押す。才能が日常の中にあるというのは、まさに吟の夫の智彦(奥野瑛太)のこと。ケン(浅川大治)も同居する東京の関内家は着々と若者のシェルター化しつつある。長女で苦労の多かった吟に、母の光子(薬師丸ひろ子)のような包容力が備わってきた印象を受けた。

 子の心を知って悩むのは親も同じ。オーディションを前に音は眠れない夜を過ごす。タロット御手洗(古川雄大)の言う「グッドエンディング」が訪れることを願うばかりだ。

■石河コウヘイ
エンタメライター、「じっちゃんの名にかけて」。東京辺境で音楽やドラマについての文章を書いています。ブログTwitter

■放送情報
連続テレビ小説『エール』
2020年3月30日(月)~11月28日(土)予定(全120回)
※9月14日(月)より放送再開
総合:午前8:00〜8:15、(再放送)12:45〜13:00
BSプレミアム・BS4K:7:30〜7:45
※土曜は1週間を振り返り
出演:窪田正孝、二階堂ふみほか
写真提供=NHK
公式サイト:https://www.nhk.or.jp/yell/

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