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『アリー/ スター誕生』は“本格派”の映画に 古い物語を現代にフィットさせた新たな解釈

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 『カサブランカ』や『オズの魔法使』などのように、長年の間愛され、また後の作り手によって何度も引用されたり作り直される、アメリカ映画の象徴となる作品がある。きらびやかなショービジネスに存在する光と影を描き、何度もリメイクされた『スタア誕生』も、まさにそういう数少ない映画だ。

 今回のリメイク企画は、クリント・イーストウッド監督によって撮られるはずだったが、イーストウッドはフォー・シーズンズを題材にした伝記ミュージカルの映画化作『ジャージー・ボーイズ』の方を手がけることにしたため、企画は『アメリカン・スナイパー』主演俳優だったブラッドリー・クーパーに渡る。

 監督と脚本、そしてレディー・ガガとともに主演を務めた、ブラッドリー・クーパーによる『アリー/ スター誕生 』は、初めての監督作として「出来過ぎ」と言えるくらいに、大きく予想を超えた質の高い映画となっていた。多くの新人監督のような一点の突出した才能で驚かせるのでなく、様々な要素がバランス良くアンサンブルを奏でていて、まるでベテラン監督が撮ったかのような、堂々とした本格派の映画になっているのだ。

 だが、本作はあくまで古い映画が起点となっている。現代の進歩的なアメリカ映画と比較すれば、どうしても男女の描き方は保守的に見えてしまうはずである。そこで、本作は新たな解釈によって、古い物語を現代の感覚にフィットさせたものにして、多くの観客を感動させることに成功している。その工夫はどのようなものだったのかについて、ここで考察していきたい。

 『アリー/ スター誕生』は、基になった映画も含めて数えるなら、4度目のリメイク作品となる。描かれる題材が、映画スター、ミュージカルスター、ポップスターへと変遷していった流れを受けて、今回も音楽業界の物語を扱っている。リメイク作品全体の大きな共通点は、かつてスターとしてもてはやされたものの、人気を失い始めている男性が、若く才能ある女性を見出して、彼女をスターにするきっかけを作るという点である。やがて二人は結婚するが、アルコール依存に陥っている男性の方は、彼女とは対照的に破滅していく。

 本作でブラッドリー・クーパーが予想以上のパフォーマンスを披露しながら演じるロックミュージシャンのジャックは、すでにアルコール依存症の飲んだくれとして登場する。ライブ出演の合間にアルコールやドラッグでつぶれているような、破滅的傾向のある一種のステレオタイプなロッカーである。

 しかし、ジャックが飲んだくれる原因は、とくにロッカーとしてのファッションやポーズではなかったことが徐々に明かされていく。じつは彼は聴力を失いつつあり、ミュージシャンとしての将来に大きな不安を抱えていた。だから常に酩酊することで、残酷な現実から目をそらしていたのだ。そして、巡業先の町で首吊りのロープが描かれた看板を目にして引き寄せられることが象徴していたように、自殺願望すら持っている。裏を返せば、彼にとって音楽はそれほど重要なものであり、生きることそのものだったということである。

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