SF作家がど真ん中のラノベを描いたら……? タイトルのインパクト大『勃紀』ほか注目のライトノベル

2026年5月刊行のライトノベルでは、SF作家の十三不塔による『氷鉄のフロンティア ~転生ロボット工学者、ゴーレム直してたら技術革命起こしちゃった~』 (ファミ通文庫)が作者的に注目の1冊。魔王が勇者に倒されてから数年後の世界。全寮制の学校を逃げ出した貴族の次男、テッドが山中をさまようメタルゴーレムと出会ったことで前世のロボット技術者としての記憶が蘇り、廃れつつあったゴーレム技術の復興に取り組む。文芸とSFの世界で活躍してきた作者が、ラノベでも主流の転生からの異世界改革ものでどのような物語を紡ぐのか。29日発売。
タイトルのインパクトで注目を集めるのは立川浦々『勃紀』(ガガガ文庫)。読みは同じでもとある部位のとある状態を表す単語とは字が違う。それでも、内容においてヒトを護って禍津神を相手に戦う陽津神があつらえた三種の聖器が鎮矛(チンホコ)、絶盾(タテタテ)、咤魔玉(タマタマ)といった具合に特徴的な語感の言葉が繰り出され、鎮矛を振ると白い斬撃が飛び出す展開もあって妄想を誘う。『ミドルノートにさよなら』という性と心の問題に踏み込んだ傑作青春小説の書き手にしてはユニーク過ぎる設定のファンタジーになっていそうだ。5月18日発売。
夏目漱石の脳が樋口一葉の肉体に移植されて目覚めるという『夏目漱石ファンタジア』が評判になった零余子の約2年ぶりの新刊『GHOST CONCERT 東京灰燼』(ファンタジア文庫)は、4月から放送中のTVアニメ『ゴーストコンサート : missing Songs』のアニメでは描かれないエピソードを描いたノベライズ。歌が禁じられ音楽アプリだけが音楽を作り奏でることができるようになっていた2045年の世界で、クレオパトラのゴーストに取り憑かれた芹亜という少女をヒロインにしたアニメ。ノベライズでは東京への復讐を誓うゴーストを止めるために芹亜が活躍する。文豪にバトルをさせた作者の筆がゴーストと化した異人たちをどう描いているかに注目。5月20日発売。
「シュレディンガーの猫探し」シリーズの小林一星による新作『願い星は君にほほえむ』(ガガガ文庫)も気になる1冊。大きな龍が1週間後に現れ世界を滅ぼしてしまうという状況で、龍神の復活を止めるために「七龍祭」を開いて盛り上げようとする人々の物語。何かのために奔走する人たちの熱意に触れることができそうだ。5月18日発売。
他にも、人気シリーズを持つ作者の新刊が続々登場。『アイドライジング!』シリーズの広沢サカキによる新作『17歳と、18以上~後輩ギャルは私と××を知りたいらしい~の』(スニーカー文庫)は、タイトルにそそられるところ極めて大。高3の志田凛が「女の子同士のR-18イラスト」を描いていることを後輩の飴ノ瀬あこに見られてしまい、自分では観られないR-18の世界を教えて欲しいと迫られる。いけないイラストを媒介に始まり深まっていく女の子どうしの関係を楽しめそう。発売中。
『わたし、二番目の彼女でいいから。』シリーズの西条陽も新作『たかがアイドル! ~されど、やっぱり顔はいい~』(電撃文庫)を刊行。ビジュアルの良さでトップアイドルに一気に駆け上った5人組だったが、その正体はポンコツ集団で、マネジャーとしてアイドルたちの面倒を見ている高校生の花ノ目一徹は5人の恋心を一身に向けさせてスキャンダルを防ごうとする。シェアハウスを舞台に繰り広げられるアイドル永久不滅計画の行方はどうなる? 5月9日発売。
『クラスのぼっちギャルをお持ち帰りして清楚系美人にしてやった話』の柚本悠斗は『孤独だった国民的美少女の妹を一晩泊めたら懐かれた』(GA文庫)を5月15日に刊行。タイトルそのままに元子役で今は芸能事務所でアルバイトをしている少年が国民的女優の妹から懐かれる。5月15日発売。
アニメ『ガールズ&パンツァー』のスピンオフ作品『ガールズ&パンツァー リボンの武者』や、『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』のコミカライズなどミリタリー絡みの作品で定評の野上武志がイラストを手がけるなら、内容にもガチのミリ描写を期待したくなるのがしろうるり『兵站将校は休みたい』(エンターブレイン)。小説投稿サイトに連載されて人気の作品で、上官も副官も戦死し物資も焼けてしまった戦場で兵站を担う中尉の苦労と闘いが始まる。5月29日発売。
キャラクター小説系からは藤紘『佐藤の告白』(集英社オレンジ文庫)を2025年ノベル大賞〈大賞〉作品として注目したい。「佐藤君が鈴木君に告白したらしい」という噂話を発端に起こった騒動に、佐藤のことが好きなひなのや担任の教師、佐藤の母親がそれぞれの過去や思いを抱えながら対峙する。男子が男子に告白するというトピックへの反応を見つつ、自分自身の向き合い方を問われそうな作品だ。5月20日発売。
ビーズログ文庫で刊行されていた千花鶏のシリーズが一般向けの文春文庫で再刊。『女王の化粧師1』(文春文庫)は、小国デルリゲイリアの花街で娼婦に化粧を施す化粧師として働くダイが、没落貴族の娘・マリアージュの専属の職人になってして彼女を女王選で勝たせるために動き出すというストーリー。自分を変えたいと願う気持ちを代弁してくれるような内容が、改めて大勢の読者の気持ちを奮い立たせそうだ。5月8日発売。































