『ハイスクール!奇面組』新作アニメ、なぜ不評に? 80年代ギャグ漫画リメイクへの違和感

2026年1月より、TVアニメ『ハイスクール!奇面組』が“ノイタミナ”枠で放送開始となった。原作は80年代『週刊少年ジャンプ』発の学園ギャグで、85年からの旧作アニメも含め「一大ブームを巻き起こした」と公式に振り返られるタイトルだ。
ところが新作は、放送直後からSNS上で賛否が割れ、とりわけ否定的な反応が可視化されやすい状況になっている。実際、初回を見て「こんなんだったっけ?」と違和感を抱き、旧作と比較して“テンポ”や手触りの差を指摘する声も出ている。
なぜいま、『奇面組』は“懐かしさ”だけでは受け止めきれないのか。「ゲンロン ひらめき☆マンガ教室」で主任講師を務める批評家のさやわか氏に、作品の歴史的価値を確認しながら、今回のつまずきの構造を聞いた。
『奇面組』は80年代にどう受容されたのか
さやわか氏は、『奇面組』の核に「80年代的なスラップスティックとナンセンスの洗練」があったと語る。ドタバタで押し切るだけでなく、当時の感覚では“都市的で可愛い”タッチが成立していたという。
「『奇面組』って、乱暴に言えば“わちゃわちゃしたキャラがいっぱいいて楽しい”のが強みなんですよね。ギャグとしてはスラップスティック+ナンセンスなんだけど、当時の空気のなかではちゃんと洗練されていて、“キャラ漫画”としての快感があった」
さらに、80年代のアイドルブームとの結びつきも無視できない。旧作アニメ主題歌と“うしろゆびさされ組”の関係性は象徴的で、新作でも「旧作主題歌のカバー」企画が組まれていること自体、当時の盛り上がりが“参照元”になっている。
「群像キャラものとして、当時のアイドル的な消費と相性がよかった。『奇面組』の“組”感って、メンバーが増えたり、推しができたりするグループ文化と並走してた部分があると思います」
加えて重要なのが、女性ファンによる“二次創作的な楽しみ方”が早い段階から芽生えていた点だという。キャラ同士の関係性を想像して遊ぶ、いまで言う“推し活”的な回路が、すでに作品側に用意されていた。
「今ほど一般化してない時代に、キャラ同士の関係性や“この子とこの子、仲いいんだ”みたいな楽しみ方が成立していたのは大きい。後年のキャラものに繋がる、かなり初期の例として見ても面白いと思います」
今回のアニメ化の問題点
では、なぜ今回「受け止めづらさ」が前景化したのか。さやわか氏がまず挙げるのは、作品の笑いが“当時の規範”と強く結びついている点だ。ギャグは世相や言葉遣いを取り込みやすい分、時代が変わると「笑いどころの前提」がすべりやすい。
「社会の価値基準は時代によって動くものです。80年代に『奇面組』が描いた社会規範との“ずらし”が、いまは別の意味に見えたり、そもそも前提が共有されなかったりする。すると、笑いとして成立しにくくなるんですよね。新作は公式発表でも“令和の時代感に沿った奇面組”といった言葉を掲げていて、奇面組のメンバーが“多様性”の観点から自分たちの個性を肯定するような描写がありますが、そもそも当時はそんなことを考えてキャラクターを描いたわけではなかったはずです。例えば、奇面組は“変態集団”であるとされていますが、当時と現代の“変態”のニュアンスには隔たりがある。“現代設定にしました”って宣言して、表層的にアップデートしたからといって、うまく馴染むわけじゃない。根っこの価値観まで含めて再設計しないと、見ている側はどうしてもちぐはぐさを感じる」
さらに、映像面でも“統一感”の設計が弱いように見える、とさやわか氏は話す。旧作は太めの線や発色、MV的なオープニングの作り方が作品のドタバタと噛み合っていた一方、新作は今風の細い線や淡い色調が、わちゃわちゃした世界観とぶつかって見える局面があるという。
「『奇面組』って、むしろ“ごちゃごちゃしてた方がいい”作品だと思うんです。整えすぎると空々しく見える瞬間が出てくる」
物語運びについても、初見の視聴者への“入口設計”が難しい。原作由来の学年・改題の流れを踏まえた構成を丁寧にやるほど、事情を知らない人には置いていかれやすい。逆に、日常の断片をテンポよく投げる形式のほうが『奇面組』の快感に近かったのではないか――そんな見立ても出てくる。
リメイク/リブートの難しさと、今後への期待
そもそも近年、アニメ業界全体が“新規オリジナルのリスク”を避け、既存IPに寄りやすい。だからこそ「過去の名作を掘り起こす」企画は増えるが、古典は古典として読めても、“いまの新作”として出すと摩擦が起きやすいのも事実だ。
「リメイクで一番大事なのは、“原作通りじゃなくていい”って受け止められる土壌がある作品かどうか。そこを見誤ると、原作ファンにも新規にも届かない中途半端になりやすい」
その意味で、成功例として語られやすいのが『おそ松さん』だ。『おそ松くん』のフォーマットだけを借りて、まったく別のことをやると振り切り、ビジュアルやノリを最初から“現代仕様”に打ち出したことで、新しい客層を作った。
「“このIPで何をやるのか”を最初に決めて、現代の表現として出し切る。リブートって本来そういうものだと思うんですよね」
『奇面組』も、作品の歴史的価値や“キャラものの源流”としての面白さは揺るがない。だからこそ、いまの批判の噴き上がりを「昔はダメな時代だった」で終わらせるより、“どう更新すれば笑えるのか”という設計の問題として捉え直すことが重要になるはずだ。懐かしさの参照だけでなく、令和の作品としての輪郭をどこまで描き切れるかが、今後のリメイクアニメの課題となってくるのではないか。














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