このラノ1位『汝、暗君を愛せよ』、小説版『フリーレン』、「とある」シリーズ最新刊……年末に見過ごせないラノベ話題作

『汝、暗君を愛せよ』他12月のラノベ話題作

 2025年12月のライトノベルは、『このライトノベルがすごい!2026』で新作単行本・ノベルズ部門の1位を獲得した本条謙太郎による『汝、暗君を愛せよ』の待望の続編『汝、暗君を愛せよ2』(DREノベルス)が12月10日に登場。企業の三代目経営者として挫折し死んだ男が、転生した世界で王となって財政的に厳しく外交的にも危機にあった国を、生前に培った人事力と知識で乗り切っていくストーリー。第2巻では4年目に入った治政で、新たに打ち出した施策を貴族たちに反対されて起こる行き詰まりを、どう突破していくかに注目が集まる。


 漫画やアニメで大人気の『葬送のフリーレン』の小説版にも第2巻『小説 葬送のフリーレン ~前奏~2』(小学館)が12月18日に登場。執筆は第1巻と同じ『夏へのトンネル、さよならの出口』で知られる八目迷で、原作者の山田鐘人による監修のもと、凶悪さを漂わせるユーベルの過去や、主人公のフリーレンの故郷となるエルフの里の物語、ゼーリエが率いる大陸魔法協会の日常に、ゼーリエが弟子のフランメと暮らした日々などが描かれる。いずれも本編には登場していないエピソードで、読者の物語世界への理解を深めてくれそうだ。

 設定とタイトルに興味を誘われるのが12月5日発売の漂月『転生記者の取材手帳 ~王都の闇を暴いた男の英雄譚~1』(PASH!ブックス)。週刊誌記者から転生して、近代の英国に似た世界で雑誌の売り子をしている主人公が、才女だがポンコツらしいメリアナ・ワーナードの雑な記事に業を煮やし、転生前の仕事で何かあったのかもう関わらないと思っていた雑誌編集の仕事に復帰して記者を始める。前世の経験を活かして何を暴くのか? ワクワクする展開を楽しめそうだ。

 ひなちほこ『トリック・オア・デリート 不可解01:世界に殺された少女アリシア』(電撃文庫)は、魔術都市となった19世紀のロンドンが舞台。大英帝国で唯一の「魔術資格を持った探偵」として名を馳せているエリオットが、失踪した兄を探し助手のエリオットの本当の人生を取り戻すために、白霧に包まれたロンドンの街を駆け回る。魔法が存在するファンタジー世界が舞台のゴシックミステリとして、『転生記者の取材手帳』とはまた違った探索の物語を見せてくれそう。12月10日発売。

 『魔法科高校の劣等生』が人気の佐島勤による『セイクリッドサイン 帰還勇者と転生少女』 (アース・スターノベル) は、異世界に召喚されて人類を救った春原徹が現実世界に帰還すると、街角迷宮《ストリート・ラビリンス》が現れるようになり、中で蠢く怪物たちとセイクリッドサインという力を持つ一握り人間だけが戦っていた、という設定。徹はセイクリッドサインを持っていないにも関わらず怪物を倒す力を発揮し、助けた少女と共に豹変した世界に挑んでいく。『魔法科』の司波達也が見せてくれるような圧倒的な強さを徹も振るうのかに興味が向く。12月17日発売。

 真戸香『君と花火と約束と』(ガガガ文庫)はタイトルそのままに花火が絡んだ青春ストーリー。高校1年の春に初対面の少女から告白された誠だったが、相手の煌(あき)が持っていたのは身に覚えのない古びた花火の絵。人違いだと思った誠は本物の”夏目誠”を探し始める。盛大さで知られる長岡まつりの大花火大会を背景に、甘くて優しい恋のストーリーが描かれていきそう。12月18日発売。

 フクロウを意味するタイトルの雛詩飽取『鴟梟』(ファンタジア文庫)は、復讐に燃える青年アシルが、赤い眼を持つ吸血鬼の令嬢ディエラに迫る”正義”の執行者たちに対抗し、吸血鬼一族と共に戦っていくダークファンタジー。アシルが人類の側に立たない理由が気になるところ。ディエラ以外にも登場する吸血鬼一族の面々がそれぞれに特色を出していて、ディエラたちに絡んで物語を面白くしてくれそうだ。12月19日発売。

 12月26日発売のサエトミユウ『城塞幼女シルヴィア ~実は万能な生活魔術を使って見捨てられた都市を発展させます~ 1』(GCノベルズ)も面白そうな新シリーズ。公爵令嬢に生まれながら【生活】という未知の魔術属性を「ハズレ」だと判断されたシルヴィアは、領地の端にある城塞に厄介払いされるが、そこで生活魔術の特性を生かし、城塞のある場所を豊かにしていく。追放ものと経営ものがミックスした内容とヒロインの愛らしさで引き付けるリノベーションファンタジーだ。

 シリーズものの最新巻では、鎌池和馬『創約 とある魔術の禁書目録14』(電撃文庫)が12月10日に発売。死から蘇ってもなお瀕死の状態に追い込まれている上条当麻だが、大悪魔コロンゾンを打ち倒すために拳を握って立ち向かう。インデックスや御坂美琴だけでなく、滝壺理后やイギリス清教の面々、そしてアンナ=シュプレンゲルやアレイスターといった超絶的な存在までもが味方について挑む総力戦のド派手さに酔いしれたい。

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