ギャル×ゾンビ漫画『マオニ』意志強ナツ子インタビュー「政治や社会の起源を自分なりに描きたかった」

――『マオニ』では、タイプの異なる2人のリーダーのどちらに付いていくかが物語の分かれ道になります。たしかに、どの組織でも起こりそうな問題ですよね。

ただいるだけ。偶像としてのリーダー"マオニ"
意志強:作中に「リーダーは動いてはいけない」という、カギになるフレーズが出てきます。マオニはそれを象徴するキャラクターで、全く動かないし喋りもしない。一方で、真央は率先して動くタイプのリーダーで、メンバーを置いて一人で食料の調達に行ってしまったためにゾンビになってしまいます。
私はどちらかが正しいリーダー像だとは思ってないんです。ただ、その二つのタイプのリーダーは絶対に分かり合えないとは思う。リーダーの素質がある人って海に浮かぶ孤島のようなもので、歩み寄ったり妥協したりできない。だから、リーダーが2人現れると、組織も自然と二つに割れてしまうんです。

グイグイ引っ張ってくれる真央にカリスマ性を感じる人も多いだろう。
――会社や一族の「お家騒動」は、そうやって起こりますよね。
意志強:そうです。会社でも創業者に付くのか、後を継いだ社長に付くのかで組織が分裂することってあるじゃないですか。そのときに、どちらを支持するのかも思想の決定的な分かれ目だと思うんですよ。「死んだ本物」がいいと思う人と、「生きている偽物」がいいと思う人は、絶対に分かり合えない。これが、私は人間の分かり合えなさの根本にあるんじゃないかと思っているんです。
――「死んだ本物」と「生きている偽物」のどちらを支持するか。
意志強:そこもゾンビものを描こうと思った理由なんですけど、本物のリーダーって亡くなったり、組織を離れたりしても、亡霊として回帰してくると思うんですよね。かつてのリーダーの幻影に囚われて苦しむ組織って多いじゃないですか。真央がゾンビ化して亡霊として戻ってくることで、根本的な思想の違いから生まれる争いを描けると思ったんです。
第三の派閥は……「男根派」?!
――昨今、「分断の時代」とも言われますが、今の世相と『マオニ』の世界観に響き合うものは感じますか。
意志強:『マオニ』では「マオセブン」が色んな派閥に分裂していく過程を描くんですが、そういう意味では近い部分もありますよね。
今の時代の分断って、二つの派閥に分かれて対立するというより、一つの集団がどんどん細分化されて、お互いに話が通じなくなるのが危ないと言われているわけじゃないですか。たしかに、それは危ないんだけど、コミュニティが小さくなる分、仲間を見つけやすくなると思うんですよね。分かり合えなさは感じるけど、孤独にはならないと思うので。だから、小さいコミュニティのなかで小さな喜びを仲間と分かち合うのが幸せな時代になっていくのかなと。

――『マオニ』では、真央、マオニに次いで、第三のリーダーであるテツヤが登場して、さらに分裂が進みます。
意志強:私のなかでは、テツヤとその一派を「男根派」と呼んでいるんです(笑)。とあるマンションを占拠してコミュニティを形成している男性至上主義の集団。そのなかで女性は子供を産むことだけが役割とされていて、ひどい暮らしをさせられている。でも、その環境で妙に生き生きと輝きはじめる女性キャラも出てくるんですよ。
――今後はさらに色んなリーダーと派閥が登場すると。
意志強:そうですね。それぞれの信念に従って、さまざまな立場に分かれていきます。それが原因で争いも起こるんですが、私としてはそれぞれのキャラに愛情の視点を持ちながら描いていきたいなと思っています。
◼︎『マオニ』はトーチwebで好評連載中!:https://to-ti.in/story/maoni01


























