『めぐる未来』『カモのネギには毒がある』『怖習』……漫画ライター・ちゃんめい厳選!今月のおすすめ新刊漫画
今月発売された新刊の中から、おすすめの作品を紹介する本企画。続々と登場する4月の新作漫画の中から、いま読んでおくべき作品とは? 漫画ライター・ちゃんめいが厳選した5作品をお届けする。
週刊漫画Times『めぐる未来』辻やもり
感情の起伏がトリガーとなり、過去に戻ってしまう“呪いのような病”を抱える主人公・未来。妻のめぐるが何者かによって殺されたことをきっかけに感情が爆発し、彼女が死ぬ前の時間にタイムリープしてしまう。
タイムリープの発動条件が感情という斬新さ。そして、“呪いのような病”と例えているように、タイムリープが父親の代から続く遺伝であることなど設定が緻密。現実にはあり得ないと思いながらも、綿密に練られたタイムリープ設定によって、どこかリアルに感じてしまう魅力がある。また、妻が殺害される非常にショッキングなシーンから物語が始まるものの、ストーリーの流れやテンポが良く、飽きずに楽しめる。昨今、タイムリープ作品が多く誕生しているが、新たな傑作誕生を予感させる一作だ。
グランドジャンプ『カモのネギには毒がある』夏原武 / 甲斐谷忍
『正直不動産』の夏原武先生と『LIAR GAME』の甲斐谷忍先生がタッグを組んだ本作。現代経済は騙される“カモ”が貧しくなり、カモる者が富んでいくものである......。通称「カモリズム社会」を提唱する天才経済学者・加茂洋平が、経済強者たちをカモにして搾取される側を救う、勧善懲悪のストーリーとなっている。
フィールドワークと称し、2カ月にもおよぶホームレス生活を送ったり、ヒーローショーのアルバイトを行うなど、さまざまな姿に成りすます加茂。周囲からは変人扱いされているが、彼の個性的なキャラクター性こそ、本作を単なる経済漫画ではなく“経済エンターテインメント”たらしめている。また、加茂の元を訪れる登場人物たちの設定は、コロナ禍で経営が立ち行かなくなってしまった旅館の娘や、ひととき融資に手を出そうとしてしているシングルマザーなど、現代の諸相を鋭く衝いたものとなっている。現代経済の闇に切り込む、加茂の華麗な姿にぜひ注目してほしい。
月刊コミックビーム『怖習』茸谷きの子
地元に伝わる因習、日常に潜む恐怖、心霊スポットで起きた霊的現象......。SNSで流布された怖い話をまとめたホラー短編集。一つ一つの物語は短いけれど、コマ割りや余白の取り方が秀逸で、何かがこちらに迫ってくるような恐怖を絵から感じる。また、この世の者ではない何かがドーンと登場する派手な怖さが見どころの物語から、気付いた瞬間にゾッとしてしまう、時差で恐怖がやってくる物語など、怖さのグラデーション幅が広い物語も魅力的だ。もうすぐやってくる大型連休、夜ふかしのお供にぜひ読んでみてはいかがだろうか。