宝島社「疲労回復ウェア」が書店で大ヒット中、その背景は? 「ビジネス書や実用書でも『疲労回復』は注目テーマ」

ファッション雑誌の販売部数で15年連続トップシェアを誇る「宝島社」が展開する、意外な商品が書店で売れ続けている。雑貨を多く置いている書店でもまず見かけることがなかった“一般医療機器”であり、着るだけで疲労回復等の効果が期待できるリカバリーウェアの「Recoverypro Lab.(リカバリープロラボ) 疲労回復ウェア」シリーズだ。2023年3月より同社の通販サイト「宝島チャンネル」で販売され人気を博してきたが、書店での展開をきっかけに現在では12万着を突破するベストセラーになっているという。

宝島社はこれまでもさまざまなファッションブランドとタッグを組んだ付録つきの「ブランドムック」を展開してきたが、なぜ自社で「疲労回復ウェア」の開発に着手したのか。同社の藤定修一さんがその経緯を語る。
「当初は宝島チャンネルの会員が100万人(現140万人)以上いたので、お客様向けに特別な商品をご提供できないかと考えたのがきっかけでした。雑誌やムックの付録等でお付き合いのあるメーカーさんの商品の展示会でサンプルを拝見して、着るだけで<疲労回復>するというコンセプトが素晴らしいと思いました。サンプルを試着してみたところ、朝起きた感じが違うなと思い、前出の宝島チャンネルの読者さん向けに商品化できないかと考えました。基本的には、弊社で企画開発を行い、臨床試験を製造販売パートナーと共同で行い、一般医療機器として届出をしています」

宝島チャンネルでの好評を受け、2024年11月から丸善丸の内本店でポップアップショップを展開し、書店での販売に手応えを感じたという。現在、書店での展開は全国250店舗に及ぶ。出版社として開拓してきた販路を活かした急拡大だった。
「当初は、上下セットで購入すると本体7980円(税込み8778円)という価格が、書店に来店したお客様には衝動買いするのに高いのではーーと思ったのですが、絶対的な価格ではなくて、商品そのものとのバランスからお手頃感を感じていただき、購入いただけるお客様が多かったようです」
書店でウェアが売られているーーという物珍しさだけでは、ここまでのヒット商品にはならなかっただろう。現在注目を集める「リカバリーウェア」というジャンルのなかでも差別化がなされており、ユーザーの評判を集めているのは同社がこだわった「着心地のよさ」。また、当初は自社サイトでの販売のみだったため利益率を抑えた低価格帯であり、豊富なデザインには出版社ならではの知見が生かされている。

「2024年には『ディズニー』や『ムーミン』のプレミアムデザインを展開するとともに、弊社が刊行するライフスタイルマガジン『大人のおしゃれ手帖』の読者(ミモザ会)の声を聴いてつくったワンピースデザインの商品、またミコスメオタク編集者が本気で作った自社のビューティブランド『BRILMY(ブリルミー)』とコラボして“おうち美容”を意識した商品編集者の視点を取り入れるなど、バリエーションが増えたことで、興味をもってくださるお客様がとても増えました」

実際、書店での反響はどうなのか。「疲労回復ウェア」を店頭で販売する三省堂書店池袋本店の荒井さんは、「とにかく予想以上の売上に驚いている」と語る。
「当店は比較的、雑貨販売を積極的に行なってきましたが、ウェア(衣類)を大々的に取り扱うのは初めてでした。『疲労回復ウェア』はパッケージもしっかりしており、商品の中身(上下・色)やサイズなど、外から見ればすぐわかるようにされているので、レジオペレーションの問題はありませんでしたが、お客様には目新しさや話題性で興味を持っていただいたとしても、実際の購入にはつながらないのでは……という心配が大きかったんです。しかし、商品を売り場に展開しているそばから興味を持ってご覧になるお客様が多く、年齢にも性別にも偏りなく、満遍なく売れています。ここ数年、ビジネス書や実用書でも『疲労回復』『休養』『睡眠』などは注目テーマですし、もともとリカバリーウェア自体に関心を持たれている方も多いようで、本と一緒にご購入されている方が多いように感じます。そのなかでも予想以上に好調なのは、価格が高いラインの『BRILMY』のセット。美容にも気を配ったデザインが女性のお客様にこんなに響くとは思いませんでした」





















