【漫画】人とご飯を食べるのは苦痛? 生きづらさにあたたかな光を灯す『生きづらいまま笑えたなら』

本書『生きづらいまま笑えたら』には、「会食恐怖症」「社会不安症」「特殊性癖」「性自認」の4つの生きづらさについて描かれている。そのうち3つの物語は、作者である浦部はいむさん(@urabehaimu)の実体験に基づいた話である。
今回は、そのなかでも浦部さんが自身のXに投稿した「会食恐怖症」に着目し、制作の背景や自身の体験について話を伺った。本記事を通して、読者の方にもそれぞれの“生きづらさ”と重ね合わせながら読み進めていただければ幸いだ。(はるまきもえ)
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生きづらい世界を温かな思い出に
ーー「会食恐怖症」をテーマにした『あたしは人前でごはんが食べられません』を制作したきっかけについて教えてください。
浦部はいむ(以下、浦部):最初は、漫画にもしたくないと思っていました。でも30歳を過ぎたあたりから、以前よりは人目を気にしなくなってきたので、描けたという感じです。ちょうど「読切を描きませんか」と声をかけていただいたのもあり、「読切だったら……」と思って制作を始めました。
ーー書籍には4つの“生きづらさ”が描かれたエピソードが収録されていますが、そのなかでもなぜ「会食恐怖症」の話をXに投稿したのでしょうか?
浦部:「会食恐怖症」がテーマになっている作品があまりないなと思ったからです。個人的にも、「会食恐怖症」という名前をみんなどのくらい知っているのか気になりましたし、知ってほしいなと思ったんです。
ーー名前を知って欲しいというのが、投稿したきっかけだったんですね。
浦部:そうですね。名前を知っているかどうかは、私にとってとても大きな違いでした。私自身、言葉を知るまでは「自分だけが変なんだ」と思っていましたが、名前があると知ったとき、とても安心したんです。そこから検索して、関連書籍を調べることもできました。
ーーたしかに、疾患名を“知ること”はかなり大事なことかもしれないですね。浦部さんはどうやって「会食恐怖症」と向き合ったのでしょうか。
浦部:関連書籍を読むと、会食恐怖症は、人目を気にしすぎてしまう人がなりやすいと書かれていました。すべての人に当てはまるわけではありませんが、私の場合はそれが原因だったんです。そこで、問題は“食べられないこと”ではないと気づきました。それからは、ご飯を食べられるようにすることよりも、人との関わり方を見つめ直すことにしたんです。それから、相手のことを考えすぎないように意識して生きていると、数年前から症状が少しずつマシになりました。
ーー問題は症状そのものではなく、もっと奥にあったんですね。ただ原因がわかったとしても、意識を変えて行動するのはなかなか難しそうですよね。
浦部:そうですね……。私は、「美味しいな」とか「盛り付けがきれいだな」と、料理に意識を向けるようにしました。あと、食事の時間そのものを楽しもうと心がけるようになったんです。次にまたその人と一緒にご飯を食べられる機会が来るとは限りませんよね。だからこそ、その時間をできるだけ楽しく過ごしたいと思うようになりました。「美味しいね」と言葉を交わしながら食べていると、食事がちゃんと思い出になるんです。そうした会話ができたことや、食事が思い出になると気づけたことも、嬉しかったですね。
ーー向き合うことで、徐々に食事の意味が変わっていったんですね。それでいうと「社会不安症」の話も、友人にライブへ誘われたことをきっかけに、主人公にとっての“社会”の捉え方が少しずつ変化していきますよね。
浦部:あの話も、キャラクターを変えただけでほぼ私の実体験なんです。ライブに行った瞬間は、世界がとても広く感じました。それと同時に、「自分が生きやすい世界って、足を運べば行けるんだ」っていうことにも気づいたんです。
ーーその友人の方は、どんな想いで浦部さんをライブに連れていってくれたのでしょうか。
浦部:たぶん、聞いても「ただ行きたかったから」って言うと思います(笑)。少なくとも「あのとき私が引きこもっていたから、外に連れ出してあげたかったんだ」とかは絶対言わないでしょうね。でもその自然さが嬉しかったんです。優しさって、凝ったことをしなくても伝わるものなんですよね。逆に「救ってあげたい」という気持ちで接すると、それも意外と本人には伝わってしまう。そこが難しいな、と感じます。
ーー改めて、“生きづらさ”ってなんだと思いますか?
浦部:治すというよりかは、上手く付き合っていくものだと思います。コンプレックスって治さないといけないと考えている人が多いと思うんですけど、私は上手く付き合っている状態でいいんじゃないかなと思うんです。そんなところも含めて、自分なので。完璧な人なんてこの世にいないですしね。
ーー「会食恐怖症」の話も、そんな終わり方でしたよね。
浦部:治せなかったけど、穏やかに笑っている主人公が描けてよかったです。
ーー今後、描いてみたい作品などはありますか?
浦部:身近なものとか、懐かしいものを題材にした作品を描いてみたいですね。早起きできたときの空の綺麗さとか、小学校が終わってからの友達と遊ぶ2時間とか、そういう大切な思い出の温度感を、漫画で描けたらなと思います。
























