『運命の巻戻士』は映画『TENET』級のタイムリープ作品? オカモトショウが今注目するマンガ3選

オカモトショウが『運命の巻戻士』を語る

 ロックバンドOKAMOTO’Sのボーカル、そして、ソロアーティストとしても活躍するオカモトショウが、名作マンガや注目作品をご紹介する「月刊オカモトショウ」。

 今回は、「月刊コロコロミック」で連載中のタイムリープマンガ『運命の巻戻士』(木村風太)、『水は海に向かって流れる』で知られる田島列島の『みちかとまり』、そして、連載スタート時から局地的に盛り上がっている『んば!』(熱焼江うお)の3作品を取り上げます!

子供向けと侮るなかれ SFタイムリープマンガ『運命の巻戻士』

『運命の巻戻士』(木村風太/小学館)

——まずは「月刊コロコロコミック」で連載中の『運命の巻戻士』(木村風太)。ショウさん、コロコロコミックもチェックしてるんですか?

 流石にそこまでチェックできてなかったんですけど、マンガ好きを公言していると、マンガ好きな人と話せるじゃないですか。FM熊本でレギュラー番組(『Honda Cars 熊本東 Presents OKAMOTO'S 90'S TOKYO BOYS』/毎週金曜 19:30-19:55)をやらせてもらってるんですけど、『運命の巻戻士』は熊本のラジオDJの方に教えてもらったんですよ。読んでみたら「『TENET』級のタイムリープを子供向けにやってる!」ってビックリして。グッと引き込まれたし、コロコロまでチェックしている人は少ないと思うので、“これ、みんな見落としてない?”ということで取り上げました。めちゃくちゃ面白いし、「俺も子供のとき、こういうマンガを読みたかった」という羨ましさもあって。小学生のときにこのマンガがあったら、絶対に追いかけてたと思いますね。

——『運命の巻戻士』の主人公は、時空警察特殊機動隊、通称「巻戻士」の少年クロノ。不慮の事故や事件で亡くなった人を、時間を巻き戻す能力を使って救うのが彼の任務ですが、運命を変えて新しい未来を作り出せる確率は100万分の1とも言われている。そこでクロノたちは、不慮の死を遂げた人を救うために何度も何度もタイムリープを繰り返して、いろんな方法を試します。

 つまり「何をどうやってもほとんど死んでしまう」ということですよね。それでもわずかな可能性にかけて、その人が死ななくて済むルートを探っていく。もちろん最後は攻略の仕方が見つかるんですけど、けっこう無茶してるというか、辻褄が合ってないところもあるんですよ(笑)。タイムリープもの的には「無理がない?」という部分があるんだけど、このマンガはブッ飛び方がすごい。そこはいい意味でマンガらしいなと思いますね。

——そんなのアリ?という楽しい驚きがある。

 そうそう。序盤はすごくわかりやすいんだけど、少しずつ話が複雑になってるんですよ。主人公が時間を巻き戻して人を救うところからはじまって、登場人物が増えてきて。クロノの弟子たちが未来からやってきて、「あなたはこういう事件に巻き込まれて死ぬので、それを阻止するために来ました」とか。そのなかで死んでしまう人が出てきたり、クロノを恨んで殺そうとする人が現れたり。大人でも「どういうこと?」ってわからなくなるくらい飛躍してるんだけど、その展開もすごくて。

——今の子供たちは、タイムパラドックスも理解してるんでしょうね。

 そうだと思います。アニメにもたくさんありますよね。古くは押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』もそうだし、藤子不二雄作品にもタイムリープものがあったり、俺らの世代だと『涼宮ハルヒの憂鬱』に衝撃を受けたり、あとは『ひぐらしのなく頃に』『STEINS;GATE』『魔法少女まどか☆マギカ』とか。そういう作品を通してタイムリープ、タイムパラドックスの考え方が広まって、今はもう子供にも余裕で通じてるのかなと。

 『運命の巻戻士』の面白さは、何度失敗しても諦めずにチャレンジするところなんですよね。頭デッカチになり過ぎてたり、どうしても失敗を恐れてしまう世の中ですけど、このマンガの主人公は考えるよりもまず行動する。実際に動いてみないと見えてこないことってあるし、「自分もこうありたいな」って(笑)。勇気と元気をもらえます。

——素晴らしい。ちなみにショウさん、子どもの頃「コロコロ」は読んでましたよね?

 もちろん読んでました。俺らがコロコロを読み始めたのは、たぶん『絶体絶命でんじぢゃらすじーさん』が始まった頃かな。あとはポケモンのマンガだったり、『学級王ヤマザキ』というギャグマンガだったり。どれも面白かったです。

ジブリにも通ずる”日本の古くからある雰囲気”を描く『みちかとまり』

『みちかとまり』(田島列島/講談社)

——そして2作目は『みちかとまり』(田島列島)。8歳の女の子・まりが竹やぶのなかで“みちか”と出会う。みちかは同級生の目玉をえぐり出して口に入れたり、まりと入れ替わったり、不思議な力を使う……という作品です。

 日本に古くからある伝承的な宗教とか信仰心みたいなものを感じるんですよね。たとえば「河童が人間の尻から尻子玉を抜く」とか「夜に口笛を吹くと蛇がでる」とか「嘘をつくと閻魔様に舌を抜かれる」とか、おばあちゃんが教えてくれるような話ってあるじゃないですか。いまは核家族化でそういう話に触れることが少ないかもしれないけど、それでもお正月には初詣に行くし、ことあるごとにお参りしたり。それも一つの信仰みたいなものだと思うんだけど、そういう感覚をすごく上手く取り入れてるんですよね、『みちかとまり』は。みちかがいきなり同級生の男子の目玉を抉り出したり、ちょっとグロいところもあるんだけど、「そういうことだってあるよね」みたいな。メジャーなところでいうと、スタジオジブリにも似たような感じの作品があると思います。

——土着的なものが現代的なファンタジーと共存しているというか。まりの祖母は「ここの竹やぶはねェ 時々 子供が生えてくんのよ」と当たり前のように言いますからね。神様と人間の境目が曖昧になっているのもそうだし。

「神様って怖いな」というマンガでもあるんですよね。日本における神様って、たぶん自然の営みとかなり近くて。怖がらせようととか危害を加えようとしているわけではないんだけど、「こういうものだよ」という感じでとんでもないことが起きるっていう。それは人間の手には負えないものだし、そういうリアルさが『みちかとまり』にはあるんですよね。かといってホラーではなくて、すごくピュアだし、神社の周りみたいな気の良さがあって。個人的には五十嵐大介さんの『魔女』なんかにも近いものを感じているんですよね。自然と共存する人間の在り方だったり、科学的には証明されてないけど、昔から“ある”とされているものだったり。生きるうえでの本質みたいなものがあるなって。海外の友達に「面白いマンガない?」って聞かれたら、『みちかとまり』をおすすめしたい。「日本ってこういう雰囲気あるよ」って。

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