“美術解説するぞー”がGakken『世界のスゴイ彫刻』を解説 「まさに美術作品のジェットコースターのような本」

スフィンクスもハチ公像も、土偶も埴輪も仏像も、あれもこれも、みんなみ~んな彫刻!? 誰もが目にしたことのある超有名作品から、一般的にはあまり知られていないけれど、ちょっと目にするだけで強烈なインパクトを残す作品や、抽象的で気になる作品まで、古今東西あわせて約70点のスゴイ彫刻を一堂に集めた大型本『意味がわかるとおもしろい!世界のスゴイ彫刻』が、今年1月末に発売。好評を博している。
「なんとなくからなるほどへ」をモットーに、美術史や美術鑑賞が楽しくなる「視点」をわかりやすく解説して人気の美術解説するぞー(鈴木博文)が本著をチェック。SNSにワークショップ、テレビ出演に講演、執筆活動と幅広く活躍中の美術解説するぞーが、楽しむためのポイントを解説する。
彫ったり叩いたりだけじゃない、そもそも彫刻って?

彫刻というと、漢字のイメージに引っ張られて彫って叩いてというイメージを持つかもしれません。でもそれは勘違いです。英語で彫刻はスカルプチャー(sculpture)といって、つまり立体作品全般のことを指します。3Dプリンターで作ったものもそうですし、音も「彫刻」になり得ます。「音?」と驚くかもしれませんが、たとえば5.1chの音響設備のように、ある空間だけに人為的に音を配置して響かせた作品を作った場合も、そこが「彫刻」空間とされるのです。
そもそも、この“彫刻”の認識を誤解している人が多いんです。本書の最後にある「彫刻のつくりかた」ページにもその説明があり、「そうなんだ」となる人が多いでしょう。銅像の作り方なども紹介されていて、たとえばロダンの「考える人」にはいくつもコピー(複製品)がつくられていますが、製法を知れば理解できます。こういった彫刻作品の製法は知らない人が多いので、この機会に知るのも面白いでしょう。
作品のテイストにあわせたフォントやデザインが楽しい
では、本書のパッと見の印象から。まず大きくて見やすい(※)。詩を読んだり小説を読んだりするのと違い、美術作品を鑑賞する際には、細部までしっかりと写真で見られるというのは重要なことです。特に初めて彫刻を見るお子さんには、とても新鮮な体験だと思います。美術作品がまとまっているものというと、いわゆるカタログ・レゾネと呼ばれる作品集や展覧会図録といった資料的なものが一般的です。当然そうしたものも大切ですが、単純に見て楽しむには、こうした写真が大きく入った大型本であるというのは、好ポイントです。
※寸法:22.7 x 1.7 x 29.1 cm
実際に中を開くと、写真とともに、目を引くタイトルが飛び込んできます。SNSなどでもそうですが、まずは一瞬で目に入るタイトルや数行のキャッチが重要です。読むというよりは、見て判断する。たとえばロダンの「考える人」には、「おーい 何考えているの?」、中国の「兵馬俑」には「8000体!? お墓のガードマン」といった具合に、作品ごとにタイトルがつけられています。扱う彫刻作品ごとに、異なるフォントや配置によって見開き2ページ全体がデザインされていて、そこからも作品の雰囲気を味わうことができます。パラパラとめくっているだけでも楽しいつくりです。

日本人が好きな雑学を仕入れることも
もう少し詳しく書かれたテキストにはいわゆる雑学が並んでいます。作家の人生や、これが作られた裏側といったエピソードトークですね。ワインに例えるなら、どこで作られて、その土はどういったミネラルを含んでいるといったプレゼンの仕方になります。個人的には、ワインならば味そのもの、彫刻なら造形そのものを鑑賞して広げていくほうが好きですが、特に日本ではこの「人に言いたくなる」ような“エピソードトーク”の人気が高いので、楽しく感じる人が多いと思います。彫刻鑑賞のひとつの“入り”として十分ですし、「この曲線が」といった造形鑑賞側からの“入り”も、大きな写真が助けてくれており、両側面からのアプローチがなされているのがいいと思います。
具体的には、みんなが一般的に思い浮かべるパンチパーマのお釈迦様ではなく、「こんなアフロのような仏像があるんだ!」と驚くに違いない「五劫思惟阿弥陀如来坐像」の秘密などが載っています。インパクトのある造形を見るだけでも面白いし、テキストで最低限のことを押さえられます。もしさらに深く知りたいと感じたなら、自分で調べたり、実際に見に行ったり、どうしてこの時代のお釈迦様はこうした形なんだろうと、歴史的なことを調べたりと広げていくことに繋がるでしょう。






















