ラノベの名作『All You Need Is Kill』STUDIO4℃でアニメ化 原作や実写映画とは異なる視点とは?

『All You Need Is Kill』アニメ化への期待

 あのトム・クルーズが主演してハリウッドで映画化されたライトノベルが桜坂洋の『All You Need Is Kill』(集英社)。続編の観測も絶えない中で、ハイエンドなアニメーションを送り出すことで知られる日本のアニメ制作会社、STUDIO4℃によってアニメ化されることが決まった。ワーナー ブラザース ジャパン合同会社のアニメプロダクション部門が『ALL YOU NEED IS KILL』のタイトルで企画を発表したもので、エッジの効いたデザインのキャラクターやスリリングなアクションシーンが登場するPVも公開されてアニメへの期待を誘い、原作への関心を改めて喚起する。

【特報】ALL YOU NEED IS KILL ティザーPV

 「素晴らしい本小説のアニメーション映画化に携われることを光栄に思います。漫画化も、ハリウッド映画化もされた本作をアニメ化するにあたって、STUDIO4℃らしい映像表現で本作品の価値をさらに高められたらと思っています。そして、観た人が繰り返す日常の中にちょっとした生きる希望を見付けてもらえればと願っています」。アニメ『All You Need Is Kill』を監督する秋本賢一郎が発表に際して寄せたコメントが、STUDIO4℃という数々の話題作を生み出してきたアニメ制作会社ならではの表現で、作品世界に新しい展開をもたらしてくれそうな期待を誘う。

桜坂洋『All You Need Is Kill』(集英社)

 2004年に桜坂洋が刊行した『All You Need Is Kill』は、ファンタジーやラブコメといったティーンの読者層が読んで楽しい作品が多いライトノベルのカテゴリーにあって、ガチガチのSFアクションとして登場して話題をさらった。謎の生命体によって侵略を受け、滅亡の瀬戸際に追い詰められている人類の中にひとり、死んでは時間を戻る繰り返しの中に閉じ込められてしまった兵士が生まれた。ケイジという名の兵士が苦悩しながらも知識を溜め力を付けて逆転を狙おうとするストーリーが、解けないパズルに挑むようなスリルと興奮を与えてくれた。

 日本だけでなく海外にも翻訳されて広がっていき、それを読んだプロデューサーが実写映画化を企画したところ、『トップガン』や『ミッション:インポッシブル』で世界トップの人気を誇るトム・クルーズが主演することになってしまった。今も含めて漫画やアニメがハリウッドで映画化される際に、原作のニュアンスが大きく改変されてしまって日本のファン的に残念な結果になることが日常的な中で、トップスターのトムが起用されるという奇跡が起こった。その上、映画はタイトルこそ『エッジ・オブ・トゥモロー』と変えられたものの、ストーリーは原作をほぼ踏襲していて、元からのファンを大いに満足させた。

 トム自身もお気に入りだったようで。2014年の公開から10年が過ぎた現在も、ダグ・リーマン監督ともども続編への意欲を失っていないといった話が、ハリウッドから断続的に聞こえてくる。原作自体は単巻で続編はなく、映画公開時に執筆・出版される噂はあったものの現在まで発表はされていない。集英社で桜坂洋に『All You Need Is Kill』を書かせ、映画化の際もロンドンのスタジオに桜坂共々乗り込んでいった編集者の丸宝行晴氏が、2024年2月に亡くなったこともあって、企画自体が残っているかも不明だ。

©桜坂洋/集英社・ALL YOU NEED IS KILL 製作委員会

 ただ、トムに関心を失わせない魅力的な設定を土台に、ハリウッドで実写映画を手がけた才能と原作者が思いをひとつにすることで、何か動き出さないとも限らない。今回のアニメ化は、『All You Need Is Kill』という作品自体の存在感をここで改めて示すことに繋がり、ハリウッドでの実写映画の続編製作、それももちろんトム・クルーズ付きでといった展開を呼び込んだとしたら、逝去した丸宝氏も大いに喜ぶことだろう。

 そこには、実写映画でトムが演じたケイジと同じような境遇に陥っているリタ・ヴラタスキを演じたエミリー・ブラントの登場も必須だろう。むしろリタの存在こそがSTUDIO4℃のアニメで大きくクローズアップされそうな見通しだけに、エミリー自身も再演を熱望しているリタという役に、トムにも増して取り組んでくれるに違いない。

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