日本文化にも影響を与えた『封神演義』とは? 中国アニメが記録的ヒット&同名漫画も人気
数々の作品でモデルとなってきた哪吒
現在大ヒット中の『ナタ2』は、この哪吒を主人公にしたオリジナルストーリーだ。人の赤子に魔性の力を持つ赤子として生まれた哪吒は暴れん坊悪魔の子と嫌われていた。ある日、太乙真人に力を正しいことに使うよう諭され、人を救うようになるが、人々は哪吒を認めようとしない。そんな中、海底の龍王の子と仲良くなる哪吒だが、その少年は哪吒を倒すために魔性の力を封じられた存在で、そんな二人の友情と宿命の戦いが物語の中心だ。
続編の『ナタ2』では人間界、龍族、天界の三つ巴の物語が展開するという。生まれの宿命に縛られながらも、自分の道を自分で切り開こうとする主人公たちの姿が、中国では共感を呼んでいるようだ。
哪吒は近年の中国アニメーションでは、頻繁にモチーフに使われている。日本でも人気の『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』にも登場。女の子のような少年の姿で描かれていた。その他、2021年の3DCGアニメーション映画『ナタ転生』では、サイバーパンクのような世界観の時代に転生した哪吒がバイクに乗って大暴れする作品も制作されている。
少し古いところでは、1979年のアニメーション映画『ナーザの大暴れ』も哪吒をモデルにした主人公が描かれている。アニメーションのみならず、実写作品でも『封神演義』は頻繁に題材にされており、同作を原案にした『封神・妖姫とキングダムの動乱』という映画が、日本でも2月28日から公開されている。
日本のアニメやマンガに与えた影響
『封神演義』は、日本のアニメやマンガ作品にも影響を与えている。前述したように藤崎竜の同名マンガは直接『封神演義』を下敷きにしており、日本人にとっての『封神演義』はこのマンガのイメージが強いと思われる。近年ではFate/Grand Orderに太公望や哪吒、黄飛虎が登場しているし、さかのぼれば、CLAMPの『X』にも美形なキャラクターとして哪吒が登場する。ゲーム『真・女神転生』や『ペルソナ』シリーズに登場するナタタイシも哪吒をモチーフにしていると思われるが、一部『鉄腕アトム』のアトムの意匠が含まれているのが興味深い。
これは哪吒が少年のままで年を取らない、脚に炎を出す車輪をつけて空を飛ぶという特徴が、アトムに似ているためだと思われる。蓮の花の化身で人間ではないという点も、ロボットのアトムと共通していると言えるかもしれない。
変わり種では、『新機動戦記ガンダムW Endless Waltz』に登場するモビルスーツ「ガンダムナタク」の名前も哪吒からとられたものだろう。その他にも、様々なマンガやアニメで封神演義の影響は見て取れる。
また、江戸時代に数々の物語を著した曲亭馬琴は、『封神演義』の影響を受けていたとされている(※2)。『西遊記』や『三国志』に比べると、日本での知名度は劣るかもしれないが、日本文化への影響も小さくないだろう。
『封神演義』の魅力はとにかく破格のスケールによる大戦の迫力だ。中国ファンタジーの古典としてあらゆるものが凝縮された内容なので、ぜひ一度読んでみてほしい。
参照
※1 許仲琳(著)、佐竹美保(イラスト)、渡辺仙州(翻訳)『封神演義』偕成社刊(1998年)P319
※2 http://doshishakokubun.koj.jp/koj_pdfs/07204.pdf






















