創刊100年「JTB時刻表」編集長・梶原美礼に聞く デジタル全盛の今、紙の時刻表を出し続ける意義
■紙やフォントへのこだわり

――時刻表には様々なこだわりや、ほかの雑誌にはない特色があるそうですね。
梶原:時刻表は第三種郵便で1kg以内に収める必要があるため、“時刻表用紙”という専用の紙を使っています。紙が薄くて透けてしまうことがあるため、文字が読みやすくなるよう、表裏の表の罫線がきれいに重なるように印刷しています。また、フォントも“Zikoku”という小さくても潰れにくく、かつ読み取りやすい専用のフォントを使用しています。
――紙もフォントも特注品なのですね。
梶原:時刻表といえば、“間違ってはいけない本”の代表格だと思います。それは誤植があってはいけないという意味でもあり、読者が読み間違ってはいけないという意味もあります。級数が小さくなると読み間違いやすい数字があるのですが、時刻表で採用している“Zikoku”のフォントは、“5”は角ばっていて“6”は丸みがあります。“3”も上がフラットになっているのですが、これも“8”と間違えないようにするため。“1”も先端が折れている1ですが、これは通過の記号と間違えにくくする工夫です。
――今まで意識したことがありませんでしたが、こういった細かい工夫がちりばめられているのですね。
梶原:あと、駅名はすべて正式な字を使っています。たとえば、神奈川県にある辻堂駅の“辻”の“しんにょう”は、“2点しんにょう”が正式なのです。ただ、よく“1点しんにょう”になることもありますよね。当社の時刻表では、正式な漢字表記で徹底しています。新しい駅が開業した際は、駅の看板を写真でもらって確認したり、担当者によっては駅にわざわざ見に行く人もいます。そこはもしかすると、鉄道会社よりもこだわっているかもしれませんね。

■「JTB時刻表」は鉄道だけじゃない!
――梶原さんならではのおすすめの活用方法はありますか。
梶原:「JTB時刻表」は鉄道だけでなく、バス、船、飛行機の時刻も掲載されているので、旅行にフル活用できます。特に飛行機の時刻は、ANA、JAL、スカイマークなどあらゆる航空会社が一覧になっているので便利ですよ。さらに、その時刻の便はどんな機材で運航されているのかというデータも載っています。
――ボーイング787とか、エアバスA350など、好みの機材で運航されている便を選ぶことができるわけですね。
梶原:飛行機に詳しい人だと、“この便は国際線仕様の機材が使われている”と、選んで乗っています。国際線仕様の機材は、ビジネスクラスやファーストクラスを国内線の料金で利用できるので、かなりお得ですし快適なんですよ。旅慣れている人は、時刻表に掲載されているあらゆる情報を駆使していますね。
――そういった活用法がもっと広まってほしいです。
梶原:時刻表の魅力を知っていただくために、「時刻表ファン倶楽部」という企画を始めています。100周年記念号にファンの皆様の名前を載せる企画や、「JTB時刻表マスター認定試験」というオンライン試験も企画しました。スマホを使って受験できますが、問題はスマホで調べるだけでは解けないようになっています。例えば、運賃計算などは紙の時刻表が手元にないとできないものがあります。ぜひ、時刻表の奥深い世界に浸っていただけますと幸いです。
――時刻表はこの先、どうなっていくと思いますか。
梶原:今後も、紙で継続して出し続けたいですね。固定ファンの読者は絶対にいると思っていますし、時刻表という文化を守る意味でも、110年、120年と続いていくように編集部一同頑張っていきたいと思います。






















