今いちばんモテるのは“強いおじさん”!? 『SAKAMOTO DAYS』『トワイライト・ウォリアーズ』で加熱するおじさん人気

『SAKAMOTO DAYS』強いおじさんが人気!

 『SAKAMOTO DAYS』の人気が凄い。引退してすっかり太ってしまった元殺し屋の活躍に、年齢や外見を超えた強さへの憧れを想起されるからだろう。折しも今、映画や小説で“枯れ者”たちが意外な強さを見せて魅了する作品が幾つも登場。世の年配者たちを奮い立たせている。

 坂本太郎。鈴木祐斗による漫画『SAKAMOTO DAYS』の主人公だ。伝説の殺し屋と恐れられながら、ひとりの女性を見初めて引退し、今は個人商店を営みながら妻や娘と平穏に暮らしている。年齢だけなら27歳とまだ若いが、風体はと言えばまるまると太ってすっかり中年。枯れたおじさんが好きな人でも、ちょっと敬遠したくなるような男がなぜか、世界から熱い視線を集めている。

世界で人気沸騰中『SAKAMOTO DAYS』

 2025年1月から放送・配信が始まったTVアニメ『SAKAMOTO DAYS』は、Netflixのグローバルランキングで非英語作品として、『トラウマコード』や『イカゲーム2』と言った韓国ドラマと上位を争う人気となっている。国別のランキングではTVシリーズでベスト10に入るところもあり、アクションの本場とも言える香港では直近で2位に食い込む高い支持を集めている。

 理由はやはり、坂本が見せる圧倒的な強さだろう。かつての部下で、今も殺し屋を続けている朝倉シンが坂本商店を訪れいろいろと仕掛けても、太った体に似合わない速度であっさりとかわし、強烈な蹴りの一撃でシンを倒してしまう。シンが、所属する組織に殺されそうになると、単身乗り込んでいってシンを解放し、自分の店でアルバイトとして働かせる。面倒見が良いのか使える労働力が欲しいだけなのか。いずれにしてもカッコ良い大人であることは確かだ。

 TVアニメの第2話では、マフィアのボスだった父親を母親ともども殺害された少女の陸少糖(ルー・シャオタン)を助ける形で、坂本の強さが発揮される。以後も、10億円もの懸賞金をかけられた坂本を狙って次々に殺し屋たちが襲ってくるが、そのことごとくを撃破していく。相手の立場になると恐怖すら感じてしまう強さ。これでスリムだった引退前は、どれだけ強かったのだろうかと気になってくる。

 そして、TVアニメ第5話「強さの理由(わけ)」で、挑んできた殺し屋のボイルを相手にした戦いの中、動きすぎてカロリーを消費し、すっかり脂肪が落ちた昔のままのスリムな姿になっては、そこそこ強かったボイルを圧倒してしまう。いざという時は本気を見せて本性も明かすこの“変身ぶり”が、坂本のカッコ良さを何倍にも高めていっそうの憧れを誘うのだ。

 最初から最強のイケメンであるよりも、弱そうに見えて実は強いというギャップがある方が燃えるし萌える。そういうものだ。

 スリムな坂本は、原作漫画ではTVアニメ化されなかった第3話(DASY3)で既に披露されていたもの。これをズラしたのは、太ったままの坂本では少し手に余る強さを持った殺し屋のボイルを相手にしたバトルの中で見せた方が、劇的で驚きをもたらし感動をも誘うといった判断があったのかもしれない。結果として世界の視聴者も、大喜びでスリムな坂本を迎えたようだ。

 原作は今も「週刊少年ジャンプ」で連載中で、殺連の中にあるORDERや、敵対する×(スラー)といった組織から、坂本に勝るとも劣らない強さを持った殺し屋たちが束で登場してスリリングなバトルを見せる。迫力は増しシリアスさも色濃くなって、近所の太ったおじさんが、実は最強といったギャップから来るコミカルな雰囲気は薄れてしまうところもある。

 代わってアクションに次ぐアクション描写で、殺し屋たちの凄まじい技や力を見せてくれるようになって引き込まれる。もちろん、太った坂本のトボけたところも挟まれホッとさせてくれるからご安心。こうした緩急が漫画やTVアニメを飽きさせないものにしているのだろう。

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