氷室冴子『銀の海 金の大地』なぜ時代を超えて読み継がれる? 小説家・佐原ひかり × 書評家・嵯峨景子が“銀金愛”を語り合う
実にハードな物語ではあるが、二人は苛酷な運命に立ち向かう真秀の姿に、大きな影響を受けたと語る。
「子どものころ、フランシス・ホジソン・バーネットの「秘密の花園」を読んで、反抗的な主人公に出会ったとき、『物語の主人公っていい子じゃなくてもいいんだ』と思ったんです。そんなときに出会った真秀は、あまりにも強烈でした。さすがに黒曜石で切りつけたりはできないけど、心の中で刃を研ぐくらいはしてもいい、もっと自由に生きていいと思えました」(佐原)
「私も進学校だった高校を中退して大学もすぐ辞めて、安定したルートから飛び降りて自由に生きているのは、色々な人に反抗する真秀から影響を受けています。私は自分という国の王だからってね(笑)。今も少女小説を仕事の軸にしていて、その入り口がコバルト文庫であり銀金だったわけですから、そういう意味では人生を変えた一冊です」(嵯峨)
1時間半ノンストップで繰り広げられた二人の愛にあふれるトークを、時折深く頷きながら熱心に聞き入る観客たち。中には、復刊を機に知った新しい読者もいたようだ。時代を超えて読み継がれる本作は、再び多くの人の心に勇気と感動を与えることだろう。