『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』M.A.V.戦術のルーツはドイツ空軍にあり? 第二次大戦前に生み出された「ロッテ戦術」とは

このロッテとシュヴァルムを組み合わせた戦闘方法を基本戦術として、ドイツ空軍の戦闘機部隊は第二次世界大戦に臨んだ。実戦の中で編み出されたこの戦術は、従来の三機編隊を基本として動く英仏の戦闘機部隊に対して有利だったため、1941年にはイギリス空軍も二機編隊を基本とする戦術を採用。さらにその後に参戦した米軍の航空部隊もこれを採用したため、ロッテ戦術は大戦中から現在まで各国の戦闘機部隊の基礎戦術となっている。ちなみに米空軍では二機編隊を「エレメント」、エレメントをふたつ組み合わせた四機編隊を「フライト」と呼称。また「フライト」の4機の位置関係が小指から人差し指までの4本の指先の位置に似ていることから、米軍では四機編隊を「フィンガー・フォー」とも呼び、現在でも戦闘機部隊の基本隊形としている。
言ってしまえば「敵の僚機にやられやすい1対1での戦闘をなくし、敵機一機に対して常に二機で対処する」ということを徹底する戦法なのだが、それが有効だったからこそ、ロッテ戦術は今日でも戦闘機戦に強い影響を与えている。また、第二次大戦当時の空戦は基本的に「高速で飛びながら視界内にいる敵に機関銃を撃つ」という戦いであり、条件としては「ミノフスキー粒子によってレーダーが使えないため、視界外からの攻撃ができない」という設定があるガンダム世界でのモビルスーツ戦に近い。有視界での機関銃の撃ち合いから発展した二機編隊での戦術は、モビルスーツ戦でもちゃんと機能する戦い方ではないだろうか。
エースパイロット同士の一騎打ちや、騎士道精神に則った敵味方のパイロット同士の相互理解といった逸話も残る第一次大戦の空戦と比べると、「2対1でカバーしながら戦えば勝率が上がる」という身も蓋もないロッテ戦術は、第二次大戦の空戦の非情さを象徴するところがある。乗機を赤く塗っていた第一次大戦時のエースパイロットであるマンフレート・フォン・リヒトホーフェンをモデルとするシャアが、非情でシステマチックな二機編隊戦術の生みの親となっている点は、『GQuuuuuuX』の皮肉なところのひとつだろう。




















