ラランド・ニシダ、小説『ただ君に幸あらんことを』変化していく家族カーストを描いた想い

ヒリヒリとした会話シーンは「書くのが楽しかったりもするんです」
――作中で母親は学歴主義が強く、特に新年会で親戚が集まった時に暴走します。親戚の子と学歴を比べるような会話は、非常にリアルな嫌な感じが出ていました。
ニシダ:そういう嫌なシーンを書くのが楽しかったりもするんですよね(笑)。うちの両親の実家は広島と山口にあるんですが、帰省したときによく親戚の話を聞いていました。「誰々が地元の有名な大学に受かった」などと話していて。でも東京の大学は有名な学校しか知られていなくて、上智のことも知らなかったですね。学習院に受かった親戚は「皇族が通う大学として有名だからすごい」と言われてましたけど。そういう親戚と集まったときの雰囲気は、自分自身が近いものを知っていました。
――そういうヒリヒリするようなシーンは書いていて楽しいものなんですか。
ニシダ:嫌なことを積んでいくところが楽しいんですよね。自分で状況を設定して、母親や主人公はこういうことを言うだろうと考える。それに対して、周りのリアクションはどうなるだろうかと。それを組み立てていくのは楽しかったんですけど、母親が妹に対してブチギレてからの後半は、書くのが結構しんどかったです。
――自分が傷つくような感じがするからでしょうか。
ニシダ:それもありますけど、小説を書くときは主人公の目線で起こったことを見ていくんです。主人公を辛い状況にどんどん誘導していくようなこともある。そこでは「どのように感じるんだろう」と考えます。自分自身の経験にも照らし合わせて「俺もきつかったもんな」などと悩みながら書きました。
例えば、主人公が妹を受験に送り出す日に、社会人になって初めて買った腕時計をお守り代わりに持たせます。最初は妹がそれを受け取るようにしていたんですけど、もう一回読み直してみて、やっぱり受け取らないほうがいいなと思ったんです。妹にとっては、主人公よりも母親に対して信頼があるという差があったほうがいいなと。ただ、受け取らないとなると、主人公はきついだろうなと思ったりして。
――小説には衝撃的なラストがありました。その展開はニシダさんの人生ともどこか交差するところがあるようにも思いました。
ニシダ:小説を書く前にプロットを立てていて、最終的にこうなるだろうというのは何となく決めていました。書いている途中にその通りにはならないかもと思ったりもしましたが、試行錯誤をした結果、最終的には最初の形に戻りました。
主人公にとって、妹が母親を慕っているのに、兄貴の自分はそこまで慕われていないという状況がある。そこで、母親に昔されたことを思い出します。そうすると、今まで母親の影響下で作り上げてきたものを、自分の中から排除しようという気持ちになるんじゃないかなと思って。その歴史と決別することになるんです。それは妹に対しても、よい影響を与えるんじゃないかなと思いました。
――最後にニシダさんにとって家族とはどういうものでしょうか。
ニシダ:自分の場合は退学や出禁の話をした通り、不仲でした。もっと遡っても、あまり価値観が合わないなと思っていました。もしクラスメイトだったとしても、友達になっていないだろうなというか。たまたまエレベーターで乗り合わせた人、という感覚にちょっと近いですね。
たまたま4人がそこに揃っていて、その中で愛着が生まれることもあれば、憎悪が生まれることもある。そういう意味では、家族に対してワンチーム感は持っていないんですよ。家族で仲がいい人はワンチーム感があるじゃないですか。それに比べると、その結びつきが弱いわけじゃないですけど、少し疑問を持っている気がします。でも長い時間をともに過ごすと、諦めみたいなところも出てきて、なんとなく一緒にいたりもする。そういうあり方があってもいいんだろうなと思っています。
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<応募締切> 2025年2月15日 23:59まで
書誌情報
書名:ただ君に幸あらんことを
著者:ニシダ
発売:2025年1月31日(金) ※電子書籍同日配信
定価:1,760円(本体1,600円+税)
体裁:四六判上製 単行本
頁数:224頁
装丁:池田進吾(next door design)
装画:辻本大樹
ISBN:9784041146583
発行:株式会社KADOKAWA
初出:「小説 野性時代」
























