地方書店 売れ筋は都心部と異なるの? 農村にある本屋に聞く、意外に売れているものと返品が多いもの

■人気ある小説や雑誌は?

――漫画以外の雑誌の売れ筋はどうでしょうか。

祥代:雑誌は昔みたいには売れないね。特に、料理のレシピはネットに上がっているから、『きょうの料理』のテキストも年末のおせち特集のときはバンバン売れたのが、今では一切動かなくなりました。女性誌はいろんな付録がいっぱいあって、山のように積み上げられていても売れるものは少ないです。よくこれで出版社がやっているなあ、と思うくらい動かないですね。

――そんななかでも売れている雑誌はあるのでしょうか。

祥代:むしろ、期待できるのは趣味に特化した雑誌。オカルトが好きな人は「ムー」を買いますよね。そういうマニアックな雑誌は動くけれど、一般の人が買っていたような雑誌はネットで代替できるので、売れなくなってきています。

――ミケーネでは病院や美容院などの定期購読の需要もあると思います。

祥代:ミケーネは定期購読のお客さんをたくさん持っているので、なんとかやっていけています。定期購読を抱えていない本屋はきついんじゃないかな。ただ、最近は雑誌の値段が軒並み上がってきているでしょう。お店でも定期購読の見直しが図られています。だから、顧客としてのつながりは切れないけれど、「家庭画報」を止めてもっと手軽な雑誌にしたいとか、安いものを求める傾向はありますね。それだけ、美容院なども少子高齢化の影響で売り上げが落ちているのかもしれませんが…。

――ミケーネは役場などに雑誌を配達していましたよね。そういった需要はどうですか。

祥代:教員や役場職員など、官公庁の職員も最近はネットで雑誌を買っています。昔は役場や病院の職員が定期購読してくれていたから、かなりの量を配達していたんですよ。今ではそういった需要は数人。官公庁の個人と繋がりが薄れているなと感じます。本当は、そういった人たちが地元の本屋で買ってくれるだけでかなり違うんだけれど、とはいえ、私たちも営業努力ができていなかったのは否めませんね。

■意外に売れるのは図書カード

――ミケーネはかつて年末年始も休まず営業していました。

祥代:今は、元旦だけ休みになりました。というのも、自分たちが歳を重ねてしまったので、元旦は休もうという話になったのです。昔は、元旦にガーッとお客さんが来ていました。周りに開いていない店が多かったので、若い人たちが行こうと思ってくれたんでしょうね。あと、お年玉をもらった子どもたちが漫画を買っていくのは新年の風物詩でした。

――年末年始の売れ筋として、手帳やカレンダーなどが挙げられますが、ミケーネではどうですか。

祥代:うちはカレンダーと手帳はもう返品があまりに多いので、お客さんの注文分だけを入れるようになりました。ずっと同じ日記や手帳を使っている人たちが、毎年同じものを注文してくれる感じです。小さな出版社が出す手帳だと、委託ではなく、買い切りでとらないといけないので、うちのような本屋は冒険できないんですよ。

――図書カードなどの販売はどうですか。

祥代:図書カードは普通に売れますね。クリスマスプレゼントなどの需要もあり、時には30組などの大口が動きます。今の時代はモノが増えすぎて、一つに絞るのが難しいので、むしろ「図書カードで好きな漫画を買いなさい」とプレゼントするのかもしれませんね。安定して人気があります。

■ミケーネは地域の交流の場

ミケーネは交流の場として欠かせない存在になっている。写真に写っているのは移住者が2人、慶應義塾大学の学生が2人。左から2番目が祥代さん。羽後町の地域おこしはミケーネが中心になっていると言っても過言ではないだろう。書店には人を引き付けるだけの力があるのだ。

――ミケーネはこれまで閉店の話もありましたが、最近では存続させる方向に方針変換したように感じます。

祥代:地域のみんなが集う場所として開いている感じです。遊ぶ場所になっています。と言っても常連さんがただ雑談をするだけなんだけれど、話をするだけの場が今の時代は求められているんじゃないかな。ミケーネには移住者や学生、規制してきた人が毎日のようにやってきます。そういった顔なじみの人にはバックヤードでコーヒーを提供してくつろいでもらっていますが、きちんと本屋にお金が落ちる仕組みを整備して、赤字にならないでやっていけるようにしたいと思っています。

――最近、本を読みながら喫茶ができるブックカフェが人気です。ミケーネにカフェがあってもいいのではないですか。

祥代:カウンター形式にしてくつろげる感じにしたいとは思うけれど…、残念ながらそこまでの予算はないので、思いを抱いているだけです(笑)。若い世代がぜひやってくれないかなと思っています。

 

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