月マガ新連載『THE BAND』――『BECK』ハロルド作石が描く“少年がギターを手にした瞬間の無敵感”

ギターとは、少年が世界と対峙するための武器
それにしても、相変わらず巧(うま)いと思うのは、ハロルド作石が描く“少年がギターを手にした瞬間の無敵感”だ。
そう、孤独な少年にとって、ギターとは、たった1人で世界と対峙するための武器の象徴である。そして、それと同時に、エディ・リーが言うように、自らの人間性を解き放つための装置でもあるのだ。
『THE BAND』第1話のクライマックス――友平とマタローは、即席バンドを組んで商店街主催のライブのステージに立つことになる。そして、その場で窮地に立たされたマタローは、傍でがむしゃらにギターをかき鳴らしている友平の姿を見るのだ。それは、単純なパワーコードすら完全に弾き切れていないヘタクソなプレイだったが、やけにマタローの心を打つ。なぜなら、その演奏には、友平の音楽に対するまっすぐな姿勢が表れていたからだ(この時、彼らが演奏しているのはニルヴァーナの「リチウム」で、その選曲も良い)。
ちなみに、友平が叔父から譲り受けたギターは、カワイの「ムーンサルト」という国産ギターである(現在は製造中止)。三日月型のボディと星型のヘッドを持つその独創的なギター(作中の言葉を使えば、「ヘンな形のギター」)は、かつて「宇宙」をコンセプトにして開発された楽器なのだという。
いずれにしても、物語はまだまだ始まったばかりだ。この先、友平とマタローという2人の少年が、ロックの世界で起こすであろうビッグバンに期待したい。






















