「日本人は非論理的」の通念を覆す? 『論理的思考とは何か』担当編集者に聞く、異例のヒットの背景
ヒットの背景にはどんな人々のニーズがあったのか
他にも本書が話題となったのは、AIの台頭やデジタルコミュニケーションの複雑化といったトレンドも「論理的思考」への人々の関心を高めていたという。
「もともとベストセラーが多い王道なテーマなので、いつか取り組まないといけないというニーズは常にありました。AIが台頭し、グローバルかつデジタルなコミュニケーションの実践問題などが誰の目にも明らかな現在、“論理的思考とは何か”を現代的に考え、整理する必要は誰もが感じていたと思います」(島村氏)
他にも、「日本人は非論理的」だと他の文化圏の人から言われたりする理由を分析。そこから逆転の発想を展開した「目から鱗」の主張が、読者に刺さったのではと島村氏は指摘する。
「日本人は“非論理的”(空気を読む)であり、英語圏の人は“論理的”(はっきりと意見を言う)で模範とすべきである、というような通念を覆しています。なぜならそれぞれに重要だと考える部分と目的が違うので、一つの論理的思考だけではダメだと訴えたことは、驚きとともに納得をもって受け入れられたのだと思います」
自分の頭で考える必要性に読者はどこかで気づいている
新書のベストセラーを見ると、前述した今井むつみ氏の『言語の本質』(中公新書)のように、硬派な本が人気を集めている。編集者として島村氏はどのように見ているのだろうか。
「借り物の情報や便利なツールを使って済ますだけではなく、自分の頭で考える必要性に読者がどこかで気づいているから(硬派な本がヒットしているの)だと思う。硬派な本に向き合い、その本を自分のペースで読みながら自分の頭で考えるしか、大事なものは身につかないという認識が広がっているのではないでしょうか」(島村氏)
島村氏は「勉強ではなく、読み物として面白いから、最後まで読み通すことができるというニーズを新書は常に満たす必要がある」との考えも聞かせてくれた。情報が溢れかえる今だからこそ、取捨選択をし考える力を身につけるためにも、まずは本書から手に取ってみてはいかがだろう。