エディア、好決算の理由は『オルクセン王国史』の快進撃? 人気作続々のラノベ&コミック事業を分析
グスタフ王の進撃がライトノベルやコミックの世界に新たな領土を打ち立てるか? デジタルコンテンツ事業や出版事業を展開する株式会社エディアが10月15日に発表した2025年2月期の第2四半期(中間期)決算は、売上高が16億8900万円で前年同期比3.6%増となり、営業利益は1億3000万円で同134.0%増と大きく伸びた。こうした好収益を支えているのが、樽視京一郎によるライトノベル『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』や、そのコミカライズをはじめとした出版事業の堅調さだ。
エルフの国で迫害されたダークエルフ族の族長ディネルースが、国を逃げだそうとしてエルフたちと敵対していたオルクセン王国に助けられる。王国を率いるグスタフはオークだったが、ディネルースが見知っていたような貪欲で凶暴な存在ではなく、国をまとめ農業や産業を育てて経済的に富ませる聡明な王だった。ダークエルフ族も差別せずに受け入れ、ディネルースを配下に組み入れたグスタフは、自国を脅かす敵に向かっていよいよ進撃を始める。
エディアのグループ会社で出版事業を行っている一二三書房から刊行中の『オルクセン王国史~野蛮なオークの国は、如何にして平和なエルフの国を焼き払うに至ったか~』は、オークというファンタジーの世界では見下されがちな存在が実は知的で、逆にエルフという敬愛されがちな存在が高慢で尊大だといった逆転の構図で読者を驚かせた。そして、グスタフが内政や軍事で打ち出した的確な指示に触れて、指導者とはこうあるべきなのかといった関心を誘って人気となった。
THORES柴本による美しいイラストと、戦記物のようなミリタリー描写の詳細さでも楽しませてくれた『オルクセン王国史』は、2023年12月に第1巻が発売されるや書店の店頭で品切れになる売れ行きを見せた。電子書籍の方も順調に売上を伸ばした模様。6月に刊行された第2巻も同様に好評をもって読者に受け入れられた。一二三書房からはベテラン漫画家でミリタリー描写に定評がある野上武志によるコミカライズも登場して、ライトノベルレーベルの「サーガフォレスト」でありコミックレーベル「ノヴァコミックス」の存在感を高めている。
コミックでは、28歳の限界OLが見知らぬ王国の国王として召喚されて怒濤の日々を送ることになるキシバマユの小説『異世界に召喚されて私が国王!? そんなのムリです!』が、第3回 一二三書房web小説大賞でコミカライズ賞に選ばれトガタガトによってコミカライズされ、8月に第1巻が登場した。これらを含め、決算期の第2四半期にあたる6月から8月の間にライトノベルは19作品を刊行し、コミックも39作品を刊行と快調なペースで出版事業を展開した。
結果、この間の出版事業の売上高は4億1300万円となり、第1四半期の4億4500万に続いて連続で4億円超えを達成した。過去には2024年2月期の第2四半期に達成した4億3100万円があっただけで、その後3億円台に落ちたものが2025年2月期に入り急回復した格好だ。
これには、『オルクセン王国史』の第1巻が口コミで売上を伸ばしたこともありそう。同じサーガフォレストから続々と登場している異世界ファンタジー、インモラルな描写が話題のマサイによる「監禁王」のシリーズを始めとしたブレイブ文庫、ノヴァコミックス、女性向けのロマンスファンタジーを揃えたコミックラワーレといった様々な読者層に向けたラインアップの拡充も、奏功していると言えそうだ。