ルイ・ヴィトン、地方から撤退相次ぐーー百貨店の外商担当、東京から富裕層へ出張するケースも
■相次ぐルイ・ヴィトンの撤退
フランスのラグジュアリーブランド「ルイ・ヴィトン」が、茨城県から完全撤退すると発表された。現在、水戸市の「水戸京成百貨店」にある直営店が、12月25日を機に閉店するという。
実は近年、地方百貨店に入っていたルイ・ヴィトンの店舗が相次いで閉店している。2019年には大分県大分市のトキハ、2023年には福島県郡山のうすい百貨店、静岡県浜松市の遠鉄百貨店から撤退している。今年7月には千葉県柏市の柏髙島屋からも撤退した。
ルイ・ヴィトンは集客力が絶大であるため、百貨店のなかでも最高のスペースに出店していることが多い。特に地方の百貨店にとっては、ティファニーやロレックスなどと並んでテナントの要と言える存在であった。
しかし、ルイ・ヴィトンに限らず、海外ブランドは大都市に相次いで大型店を出店、もしくは既存店の改装を進めている。羽田空港や成田空港などに、免税店を出店する例も多い。その一方で、地方にある直営店の整理を加速している状況にある。
■活気がなくなった水戸駅前
水戸京成百貨店は、かつて正規取り扱いがあったロレックスを筆頭に、海外の高級腕時計の取り扱いが軒並みなくなった。そんななかでルイ・ヴィトンの撤退は大きな痛手であるはずで、今後はさらなる集客力の低下が進むのではないかと危惧されている。
9月8日(日)、JR水戸駅から水戸京成百貨店まで歩いてみた。家電量販店やゲームセンター、喫茶店、アニメショップなどが多い水戸駅周辺は活気があるが、“黄門さん通り”と呼ばれる国道50号線沿いは日曜なのに活気がない。
人の姿もまばらで、シャッターを閉めた店や、廃墟化しているビルも目に付く。取り壊されたビルの跡地は駐車場になっていた。中心市街地の活性化はお世辞にも成功しているとは言い難い。これでは、ルイ・ヴィトンの撤退は時間の問題だったのかもしれない。
水戸市の郊外には「イオンモール水戸内原」があるが、こちらは平日も駐車場にクルマがあふれ、にぎわっている。約200店舗の専門店が出店し、映画館まである。若者、家族連れは百貨店よりもイオンモールのほうに惹きつけられている印象を受ける。
■地方ではお金を使う場所がない
わざわざ東京の百貨店の外商担当が品物を持参してくれる超VIP顧客は別であるが、「地方に住んでいては贅沢をする場がない」「ブランド品や高級腕時計は地方に住んでいては実店舗からほとんど手に入らない」と口にする地元民もいる。
若者や富裕層が大都市に流出する要因として、仕事がないというのもあるが、金を使いたくても使う場所がない、そもそも楽しいものがないなどの理由も挙げられるだろう。
こうしたなかで、海外ブランドの撤退は地方の活力を一層低下させる可能性があるし、百貨店そのものの閉店も加速度的に進んでいる。国は地方分権や地方の活性化を謳ってはいるものの、大都市一極集中はますます加速しているのが実態だ。
地方の街づくり、特に中心市街地の活性化をどうしていくべきなのか。議論は待ったなしの状況にあるといえる。