のっぺらぼうの名づけ親は松尾芭蕉だった? 妖怪博士が解き明かす、妖怪の名づけの歴史

のっぺらぼうの名づけ親は松尾芭蕉だった?

 著者はこうした俳諧の仕組みが、現代のSNSに通じるものであったと考える。SNSをよく利用している読者なら、特定のキャラ=妖怪について共通認識が生まれ、アレンジを加えながら題材として使用していく様子に、「ミーム化」を思い浮かべたりもするだろう。

 俳諧が妖怪爆発に及ぼした影響を検証すべく、著者は妖怪の記録が残るさまざまな書物や俳人たちの足跡をあたっていく。その中で参考資料として提示される、17〜18世紀の文献に登場する300件近くにも及ぶ妖怪の名称一覧。そこから、18世紀に名称のバリエーションが大きく増えていることや、割合が多いのは「怪火(かいか)」に類する名称であることなど、興味深い事実が浮かび上がる。

 このようなリストの作成を可能としたのは、俳人たちが妖怪をデータベース化していたからでもある。調査員でもエンジニアでもない彼らが、なぜ、どのようにしてデータベースを構築したのか?についての謎解きも展開していく本書は、ITやネット文化など、妖怪や文芸とは異なるジャンルが守備範囲の人たちにも、お勧めしたい一冊なのだ。

■書籍情報
『妖怪を名づける: 鬼魅の名は』
著者:香川 雅信
価格:1,980円
発売日:2024年8月21日
出版社:吉川弘文館

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