【書店ルポ】京都編 老舗百貨店にまんだらけ開店の衝撃、アニメショップ続々の理由は?
■京都にアニメショップが続々オープン
3月1日、京都駅八条口近くの商業施設「京都アバンティ」に「アニメイトアバンティ京都」がリニューアルオープンした。2011年のオープン以来、13年目を迎える同店は、売り場面積の拡大によって日本最大級のアニメ専門店となった。京都在住の友人によると、京都のアニメファンはもちろん、京都を訪れるインバウンドなどの人気を集めており、連日大盛況とのことである。
京都では「大垣書店」などの大型店や「誠光社」といった全国にその名を知られるような小規模書店があるが、現在隆盛なのはアニメ関連ショップで、オープンが続いている。2023年だけで、東海道新幹線の京都駅ビル内には京都アニメーション(以下、京アニ)のグッズ専門店「京都駅 ASTY京都 京アニグッズストア」が開店した(2024年の8月31日まで)。『響け!ユーフォニアム』のほか、『涼宮ハルヒの憂鬱』『けいおん!』『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』など、名作のグッズが揃う。
■髙島屋に「まんだらけ」ができた衝撃
アニメファンはもとより京都府民を驚かせたニュースと言えば、京都高島屋S.C.に「まんだらけ京都店」がオープンしたことだろう。「まんだらけ」は言うまでもなく、東京の中野ブロードウェイに拠点をおく、日本屈指の中古書店であり、中野をサブカルの町に変貌させた立役者と言える。そんなまんだらけが、京都の、しかも髙島屋にできるという、あまりに異色すぎる組み合わせが話題となった。
赤い鳥居が並ぶ店内は、伏見稲荷大社を思わせる造りだが、同時に中野にある「まんだらけ変や」を思い起こさせるインテリアでもある。店内にはヴィンテージ漫画雑誌からソフビ・超合金などのおもちゃ、そして漫画家のサイン色紙までかなり多種多様な品物が陳列されており、密度はまんだらけの店舗の中でもかなり濃いと感じた。国内のファンはもちろんだが、インバウンドの集客も見込んでいると思われる。
特に、京都はインバウンド需要が大幅に回復しており、記者が訪問した際も、京アニグッズストアもまんだらけ京都店も外国人の姿が目立っていた。京都は2024年、日本屈指のアニメショップが集まるアニメファンの聖地になりそうな勢いである。京都府内には京アニ作品の聖地が宇治市をはじめ各地にあり、今年は『響け!ユーフォニアム』の新作アニメも放送開始された影響とあって、聖地巡礼に訪れる観光客も増加しそうだ。
また、京都には「京都国際マンガミュージアム」があり、京都精華大学のような日本唯一のマンガ学部をもつ大学もある。京都は古都のイメージゆえどこか保守的な雰囲気があるが、明治時代には積極的に西洋の文化を取り入れたり(三条通りには赤レンガの洋風建築が建ち並んでいる)、日本初の市電を開通させたりするなど、進取の精神を有する都市なのだ。何より、高台寺には日本最古のアニメといわれる「鳥獣人物戯画」もあるではないか。こうした歴史的背景もあり、漫画やアニメの文化ともっとも親和性が高い地域なのかもしれない。
■アニメショップが絶好調な理由
都心から地方まで、書店の閉店のニュースが相次いでいる。その一方で活況を呈しているのが、アニメ専門店である。コロナ禍で人々が動画配信サイトでアニメを見る機会が増えたことや、近年の推し活ブームなどによって、大人もアニメ好きを堂々と公言しやすくなったといわれる。
アニメショップの最大手「アニメイト」の業績は絶好調であり、2023年には池袋に基幹店「アニメイト池袋本店」をリニューアルオープンさせた。国内外のアニメファンで連日凄まじいまでのにぎわいをみせ、もはや池袋の観光スポットになっている印象だ。地方でも郊外のショッピングモールにアニメイトがオープンする例が増えており、同社の業績は絶好調といえる。
東京・渋谷の「TSUTAYA」旗艦店のように、既存の大型書店がアニメや漫画関連のフロアを大幅に増やして、リニューアルされる例も見られる。まさかファッションの聖地である渋谷でアニメを大きく扱うようになるとは驚きである。アニメファンのカジュアル化、そしてグローバル化によって、今後もこうした店のオープンは続きそうである。そして、既存の大型書店は専門性に特化したアニメショップとどうすみ分けていくか、経営手腕が試されるといえよう。