【連載】速水健朗のこれはニュースではない:東京の夜のタクシーと『地面師たち』の話
早坂太吉の名も歴史に埋もれてしまった。バブル期にのし上がった地上げ屋の最上恒産を一代で築いた人物で、林真理子の小説『アッコちゃんの時代』にも登場する(実名ではない)。彼の最上恒産のCMをYouTubeで見ることができる。小林旭が出ているやつだ。キャストにお金をかけたが、撮影や演出にはまったくお金を払わなかったのだろう。こんなへたくそなカメラのパンは初めて見た。CMが会社のイメージ向上のためではなく、名刺変わりだったのか、メディアへのばらまきだったのか。
毎日いろんな客を乗せるタクシーには、信頼度はともかくあらゆる情報が集まってくるのだろう。その話を聞くためであれば、金を払ってでもタクシーに乗りたい(実際に料金は払っているのだが)。そして、コロナ禍の間に多くのタクシー運転手が引退してしまった。東京の土地を巡る記憶の伝承も同じ数だけ失われたということ。
最後に僕がタクシーで聞いたコロナ禍の東京の話。深夜の客が激減する中でまるでコロナがなかったかのように乗降が絶えなかった街が2つあるという。それは、新宿歌舞伎町と西麻布。なるほどそうだろうな。この2つの街を比較した東京論を誰か書かないだろうか。
■イベント付き書籍情報
『これはニュースではない』刊行記念トークショー
出演者:速水健朗、箕輪厚介
配信サービス:Zoomウェビナーにて配信
配信期間:2024年8月7日(水) 19時~2024年8月28日(水) 23時59分(アーカイブ視聴可)
参加対象者:blueprint book storeにて書籍『これはニュースではない』を購入した方
刊行記念トークショー配信チケット付き『これはニュースではない』は、blueprint book storeにて発売中→https://blueprintbookstore.com/items/66602b8d597398002e857307
■書籍情報
『これはニュースではない』
著者:速水健朗
発売日:2024年8月2日 ※発売日は地域によって異なる場合がございます。
価格:本体2,500円(税込価格2,750円)
出版社:株式会社blueprint
判型/頁数:A5変/184頁
ISBN 978-4-909852-54-0 C0095