和田雅成が語る『アンソロジー 舞台!』への共感 「役を生みだしていく舞台って本当におもしろい」

和田雅成が語る『アンソロジー 舞台!』

2.5次元が小説の題材になる時代がきた

――雛倉さりえさんの「ダンス・デッサン」は、ミュージカルのアンサンブルを長年やってきた男性が主人公です。

和田:先ほども言ったように、僕はもともとダンスも全然できなくて……。今は昔よりダンスしなくちゃいけない場面も増えてきたので、主人公の気持ちもわからなくはないんだけれど、僕には絶対にたどりつけない、ダンスの道を突きつめている人だからこそ生み出せるグルーヴ感があるのだと、改めて感じましたね。あの人たちはみんな、こういう想いを味わっているんだな、って。それを疑似体験できたのは、うれしかった。でも一方で、命がけでその仕事に挑んでいるからこそたどりつける場所がある、ということは僕もわかる。主人公のように、誰かを輝かせるために舞台に立つことが自分の役目だと思う気持ちも、自分が目立つためになさなきゃいけないことに戸惑う気持ちも、両方理解できますし。

――どちらかといえば、和田さんは後者なのかなと思うのですが。

和田:僕は主人公のように「アンサンブルが合ってる」とは思わなかったけど、与えられる役割によっては、引くことを覚えなくちゃいけないじゃないですか。自分でいうのはちょっとおこがましい気がするけれど、僕、オーラをコントロールすることがわりと得意で。目立つべきときにはしっかり前面に出て輝くし、他の誰かを引き立てなくちゃいけないときは、存在感を薄くすることもできる……と思っているんです。というよりは、そうでなければいけないと。

――たしかに、主役より目立とうとする人は、プロじゃない気がしますよね。

和田:与えられた役割に徹して、仕事をまっとうできる人が、やっぱりプロだと思うので。そういう人は仕事もなくならないし、だからこそ主人公は、アンサンブルを抜けてスポットライトが当たる瞬間が訪れたんだとも思います。「ここにいるぼくら」や「モコさんというひと」ほど、直接的にリアルを感じたわけではないけれど、この小説もかなり、複雑な感情を呼び起こされましたね。

――アンソロジーっておもしろいですよね。同じテーマなのにまるで違う、作家それぞれの作風を感じられて。

和田:2.5次元が小説の題材になる時代がきたんだなあ、というのも感慨深いです。ジャンルとして生まれたときは、やっぱり、ちょっと軽んじられる空気があったというか、本格的な演劇とは違うとみなす人も多かったと聞いたことがあります。演劇の新しい波は八年周期で起きる、と言っている先輩がいて、2.5次元舞台はまさにその波のなかで生まれたそうなのですが、次は僕たちが新しい何かを生みだせるよう頑張りたいな、なんて思ったりもします。2.5次元を背負って立つ、というほど自分が偉い立場にいるとは思っていないけど、もっともっと、演劇の世界をより良い方向に変えていける力になれたらな、と。

――役者だけでなく、アーティストとしても今後活動の幅を広げていくんですよね。

和田:10月から放送されるドラマ『神様のサイコロ』で主演と、主題歌を担当することになりました。『この動画は再生できませんTHE MOVIE』など、いろいろお仕事も詰まっているので、みなさんに楽しんでいただけたらいいなと思います。さしあたっての目標は、いろんなところで言っていますが、朝ドラに出演すること。もともと役者を志したきっかけが、田舎の徳島に住む祖母に、いつでも元気な姿を見せてあげたかったから。朝ドラの威力は、すさまじいですからね。祖母だけでなく、家族にとって自慢できる存在になれるよう、そしてもちろん、応援してくれるお客さんたちに喜んでいただけるよう、全力を尽くしていきたいと思います。

■和田 雅成(ワダ マサナリ)プロフィール

 1991年9月5日生まれ。大阪府出身。舞台『刀剣乱舞』シリーズ へし切長谷部役 / 舞台「呪術廻戦」七海建人役/ミュージカル「ヴィンチェンツォ」ヴィンチェンツォ・カサノ役 /  ドラマ「あいつが上手で下手が僕で」シリーズ 島世紀役 など数々の作品に出演し、テレビ・映画でも幅広い活躍を見せている。現在、ドラマ「あいつが上手で下手が僕で -巡巡決勝篇-」(日本テレビ)が放送中。TFMでは「和田雅成のオレナリにやってます!」毎週火曜27:05~27:30放送中。今後の待機としては映画「この動画は再生できません THE MOVIE」(9/13公開)、映画/ドラマ「神様のサイコロ」(9/27公開・10/9放送)主演を務める。さらに主題歌「Dice」(キングレコード)も担当し、9/25 にはCD 発売も決定。その他、主演舞台「月農」(10/9~10/19@シアターサンモール)の上演も予定している。

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