“アーティスト竹中直人”の目線を追体験できる個展「なんだか今日はだめみたい」レポート

竹中直人個展「なんだか今日はだめみたい」

 竹中直人氏の快進撃が続いている。俳優としては、7月11日に幕が開くNODA・MAP第27回公演『正三角関係』への出演に加え、7月26日には5回目となる豊臣秀吉役を演じた劇場作品『もしも徳川家康が総理大臣になったら』が公開、さらに6月25日にはエッセイ『なんだか今日もダメみたい』(筑摩書房)も発売されるといった具合で、その活動の幅広さ、多彩さには驚くばかりだ。

 加えて今週末の7月6日(金)まで、東京銀座の「ギャラリー巷房(こうぼう)」で16年ぶりの個展「なんだか今日はだめみたい」も開催中というから恐れ入る。ちなみに今回の企画は、以前知人の個展でギャラリー巷房を訪れた際に、ギャラリーのオーナーから提案されたのがきっかけだったという。

会場の「ギャラリー巷房」は、銀座一丁目駅から徒歩1分のレトロなビルにある。ここは1932年に立てられた歴史的な建築物で、現在は多くのギャラリーが入る文化発信拠点でもある

 本日(7月3日)、竹中氏が参加するレセプションパーティが開かれるということで、お邪魔してきた。会場は3FとB1Fの2ヵ所に分かれており、3Fには本展示会のために描き下ろされたイラストが、B1FにはiPhoneで撮影した写真がずらりと展示され、さらに階段下のスペースでは約4分のショート動画も上映されていた。

 3Fに展示されているイラストは、基本的には竹中氏のイマジネーションから生まれたキャラクターとのこと。「2月くらいから書き始めて200~300枚は描きましたね」とご本人が解説してくれた。ちなみに3Fの入口を入って右側の壁面にある額縁入りのイラストが今回最初に描いたものとかで、「初めはちょっと大きなものを描いてみようかと思ったんです。今回は木製の額縁と段ボールの額縁の2種類で展示しています。段ボールの額縁は映画の美術スタッフが作ってくれたんですが、これも味があっていいなぁと思って」と嬉しそうに話してくれた。

竹中氏が最初に描いたのがこのイラスト。「あの人何を持ってるの?」「ずーとあそこにいるね。」……というタイトルを読んでいると、本当にイラストが語りかけているように感じるから不思議

 それらのイラストの下には竹中氏の直筆によるタイトルらしきもの(?)が添えられている。例えば忌野清志郎氏をモデルしたという作品の下には「たけなか、この前街歩いてたらさ『芸能人ですね?』っていわれてさ、(後略)」といった具合にそれぞれがストーリーを持っており、これらを眺めているだけでも楽しめる。

 ちなみに竹中氏は、会場に展示してある別のイラストを指して、「ここに『国に帰るよう言ってあげて下サイナ……』って書いてあるんですが、自分でどうしてこんなことを書いたのか思い出せなくて(笑)」と話していたが、作品を生み出す瞬間の“作者の思い”がどんなものだったのかを想像しながらイラストを眺めてみるのも、案外面白いのではないだろうか。

竹中氏が、自分でもどうしてこんなコメントを書いたのかわからないと話していたのがこの作品。人物の優しげな表情が印象的

 イラストの大きさは50cm四方から葉書サイズまでといろいろ。そして会場中央のテーブルには壁に展示しきれなかった作品が、スケッチブックやスクラップブック入った状態で置かれており、自由に手にとって閲覧可能だ。これもなかなかできない経験なので、会場に足を運んだ際にはぜひ手にとっていただきたい。個人的には猫のイラストが可愛くてお薦めです。

3F会場の中央に置かれたテーブルには、多くのスケッチブックやスクラップブックが置かれている

 B1Fの写真は、ロケ先で見かけた風景や人物も多く含まれている。竹中氏は日頃から気になった場所などをiPhoneで撮影することも多いとかで、今回はそれらの中から厳選したものが並んでいるのだろう。なおこれらの写真にもイラスト同様に直筆のコメントが添えられており、それらがどんなイメージで撮影されたのかをうかがえるようになっている。

 なおB1F会場正面には、2022年に上演されたNODA・MAP第25回公演「Q」の時とおぼしき、ジョーカー風のメイクを施した竹中氏の巨大パネルも展示されており、来場者の中にはその横に立って記念撮影を楽しんでいる人も見かけられた。

B1Fの会場正面にはインパクト大のパネルが

 今回の個展は手描きイラストから写真、動画まで、まさに“アーティスト竹中直人”の目線を追体験することができる内容になっている。普段のテレビ等で見る竹中氏とも違う、クリエイターとしての側面もぜひ楽しんでいただきたい。

 また、先述した自伝的エッセイ『なんだか今日もダメみたい』も会場で販売されており、多くの方が購入していた。大人気大河ドラマ「秀吉」(1996年)の思い出や、玉置浩二氏とのレコーディングの様子、松田優作氏や内田裕也氏との逸話など、長年芸能界で活躍してきた竹中氏ならではの興味深いエピソードが満載で、読み応えも充分だ。

 こちらについてはReal Soundブックでもトークショーの様子を紹介しているので、合わせてお楽しみいただきたい。

■関連情報
NODA・MAP第27回公演『正三角関係』
https://www.nodamap.com/seisankaku/

『もしも徳川家康が総理大臣になったら』
https://moshi-toku.toho.co.jp

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